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言の寺 其の弐

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悲しみを降らせる方法



「溢れなければ涙は、一粒とカウントされることはないのだろうか?」

笑顔でキミに手を降って一人バスに乗り
窓に流れる街並みに視覚情報を固定したまま
ワタシは考えているのです

*****

瞼の隙間に溜め込んで
キミに見せないよう見せないよう
そうっと空に蒸発させてきたワタシの悲しみは
涙の一粒としてカウントされることはないのだろうか?

*****

ワタシはまだキミの前でないたことがない
キミとの関係を失いたくないから……
キミの負担になりたくないからワタシ
ずっと我慢してきた 多分……これからもずっと

今頃のキミは……あの人と一緒にいて……楽しく食事でもしているのでしょう?

ワタシ……
一人になっても泣けなくなってしまった
我慢しすぎて
涙をちゃんと流すことが できなくなってしまったよ

そんなときワタシ
何も見ないよう考えないよう
瞳をじっとさせて
眦をぐっと盛り上げて
涙を瞳に張り付かせるの

「涙を蒸発させるんだ」

表面張力の臨海に達した涙を
すーと大気に蒸発させるの

そうすれば誰も
ワタシの悲しみに気づかないでくれる
涙は流れずにこの世から消失する
でも悲しみは決して……蒸発したりない……

ねぇ

今度キミにあったらワタシ
思いっきり泣いてみようかな?

大粒の涙を涙を涙を
キミのシャツ目掛けて
目一杯滴らせてみようか……

でも本当はワタシ
キミの前で涙を流す勇気なんて……持ちあわせていない

ワタシに出来ることといえば
今までと同じように
涙を宙に霧散させることだけ……

大気に散ったワタシの涙はきっといつの日か
空の湿度を飽和させる
一雨分の悲しみとなる

明日がもしも雨ならば
きっとそれはワタシの想いです

高度5000mから刺すように
そっと アナタのシャツに一滴落ちる

*****

それでもアナタはまだ
ワタシの涙に
気付きはしないのでしょうか?

作品名:言の寺 其の弐 作家名:或虎