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言の寺 其の弐

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そんなようなもの




ような

霙(みぞれ)になりきれなかった雨粒の体温のような
街路樹の影で朽ちてゆくスチール缶の絵柄のような
防波堤に投げ捨てられたクラゲの成分表示のような
無声映画の中で絶叫するモノクロの少女のような
へし折れた脚でよろよろと前進する赤い蟹のような
カラスに目玉をつつかれている中央分離帯の猫の死骸のような
手首に吸い込まれていくカッターナイフ自身のためらいのような
ポスターの政治家の眼に留められた押しピンの主張のような
空き地でプランターと化している積み上げられたボロタイヤのような
赤ん坊の手でぶん投げられた新幹線の推定死者数のような
穴の開いたサドルにかぶせられたビニールカバーに咲くヒマワリのような
体温のないコをシャリシャリと食むハムスターの母性のような
コールタールを纏いコスプレをしているカモメの焦りのような
階段の途中で振り向き睨みつける女子高生の憎悪のような
マンホールの下に棲む生き物すべての多数決のような
中年男性から剥がれ落ちたフケが宿すプリズムのような
ミルフィーユに挟み込まれた小さな羽虫の遺言のような
電球2,3切らせて光るネオン看板のライムのような
ビニールプチプチに許された合法的麻薬性のような
死亡診断書に書き連ねられた丸文字の女子力のような
油と果汁で両面を濡らしたお弁当箱のバランのような
ステージ1でマリオが最初に出会うキノコの足踏みのような
血が醸す湯気が伝える真犯人の似顔絵のような
それはまるでぼくのきもちのような
きみをおもうぼくの
きもちのような

そんなようなものです





作品名:言の寺 其の弐 作家名:或虎