風と共に去るも悔いなし
3 うわべの殻など
奔放な
小娘ひとりに
世間はめっぽう
手を焼いた
あの我が儘な
じゃじゃ馬の
いったい全体
どこがいいと
君をからかう
俺を笑って
揶揄した輩は
両手両足でも足りん
ところがどっこい
俺に言わせりゃ
目に余る
傲慢も
勇み足も
君なればこその
華があった
持ちあがる
騒動の非が
ことごとく常に
君にあっても
どれほど周りを
泡吹かせ
歯ぎしりさせ
きりきり舞い
させようとも
今回だけは
目をつぶって
かばってやろうと
思いたくなる
無邪気さが
君にはあった
理屈も道理も
すっ飛ばして
尻拭いして
やりたくなる
愛らしさが
君にはあった
そして何より
遠からず君は
大人になる
今しばらくは
手に負えない
その傲慢も
危なっかしい
勇み足も
やがては必ず
脱いで捨てる
幼さゆえの
一時の殻
だが
俺が惚れたのは
断じてそんな
子どもの
うわべの殻じゃない
殻なんか
脱ごうが脱ぐまいが
死ぬまで変わらず
その奥底に
脈々と
息づいてる
痛快なる
君の心根に
俺は惚れずに
いられなかった
何としても
君の心と
交わりたかった
果たして
我が身に
利となるか
害となるのか
瞬時に見て取る
その嗅覚
獲物と
見定めたら最後
手に入れるまで
食いついて
離そうとしない
その執念
慣習だの
しきたりだの
世間が
珍重したがる遺物を
ことごとく
無視して歩く
剛胆ぶり
見ていて
痛快きわまりなかった
もしも俺が
女だったら
まさにこう言い
こう生きたはずと
疑わないほど
君に
俺自身の
分身を見た
俺たち2人は
似た者同士
だったから
君がどこで
何を言い
何をしようと
君の心は
俺にはいつも
一から十まで
手に取れた
どれだけ時間が
かかろうと
必ずや君の心を
手にしたかった
手にしてみせると
誓ってた
欲望を
追うと決めたら
躊躇を知らない
君という
世間に言わせりゃ
無粋な女の
突拍子もない
その精神を
あるがままに
理解してなお
忌み嫌わない男など
俺しかいないと
思ってた
君ほどの
類まれなる
じゃじゃ馬を
乗りこなすなり
手なずけるなり
する男など
自慢じゃないが
この世の中で
俺しかいないと
自負してた
少なくとも
君が操を
捧げつづけた
我らが
アシュレ君になど
生まれ変わっても
そんな芸当は
不可能だと
信じてた
いや
今の今だって
それだけは
固く信じて
疑わない
作品名:風と共に去るも悔いなし 作家名:懐拳