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夢 - 兄妹 -

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男の子が立っていた。
小学校に上がるかどうか、というくらいの年齢の男の子だった。
男の子は私と目が合うと、にっこりと私に笑いかけた。
男の子はその両腕に、赤ちゃんを抱いていた。
私は男の子に近づくと、話しかけた。
「あなたの弟? 子守しているなんて、えらいわね。」
男の子はにこにこと笑いながら言った。
「弟じゃなくて妹だよ。ほら、とっても元気だよ。」
私は男の子の声に惹かれるように、男の子の腕の中の赤ちゃんを覗き込んだ。
生まれたばかりのような、小さな赤ちゃんが安心しきったように、男の子の腕の中で眠っていた。
赤ちゃんの口許の右側に、小さなほくろがあった。
「かわいいわね。このほくろ。」
私がそう言うと、男の子は少しだけ誇らしげな顔をして答えた。
「この子は僕が守ってるから、大丈夫だよ。」
男の子はいきなり私に赤ちゃんを差し出した。
私は驚きながら、思わず赤ちゃんを受け取った。
ずっしりとした重みが私の両腕にかかる。
その暖かさと、柔らかさと、重みに私は圧倒された。
これが、命の暖かさと重みなんだって、初めて気が付いた。
赤ちゃんは私の腕の中で、すやすやと眠り続けている。
「赤ちゃんを抱っこできる時期なんて、長い人生の中ではほんの一瞬だから、この子はいっぱい抱っこしてあげてね。」
男の子の声に私が目を上げると、男の子はどこにもいなかった。
作品名:夢 - 兄妹 - 作家名:sirius2014