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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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 佐世保と上社は、書庫から出る。恐る恐るだと怪しまれるので、堂々とだ。変装しているので、たぶん大丈夫だろう。
「どこに向かえばいいんだ!?」
「さあ、そこまでは」
廊下を職員やザフト兵が行き来している。佐世保と上社の正体には気づかれていないが、そばを通り過ぎる度に寿命が縮まる……。目的は一応済ませたのだから、長居は無用だ。早くこの建物から出て、旧大使館の転送装置で帰るのだ。

   ウ〜〜〜!!! ウ〜〜〜!!!

 警戒心をマックスにさせる効能が含まれていそうな警報が、何度も鳴り始める……。
「急ぐぞ」
「わかってるわよ」
小声で話す佐世保と上社の足取りは、自然と早くなっていた。
「思い切って、あそこから出よう」
彼がアゴで示した先には、非常階段へのドアがあった。非常階段は、建物の外壁に取り付けられている屋外タイプだ。平時なら目立つだろうが、夜の上にサイレンが鳴るような非常時だ。この状況なら、うまくいく可能性が高い。
「いいわね。そこからのほうが少し近いし」

 周囲に誰もいないことを確認してから、非常階段へのドアを開ける上社。開けた途端に非常ベルが鳴ったりはしなかった。
「急げ急げ」
「言われなくても」
大急ぎで階段を駆け下りる2人。大火災から逃げているかのようだ。うるさい足音が鳴ってしまうが、目視で発見されるよりかはいい。
 途中、窓をこっそりのぞきこんでみた。そこはオフィスで、人々が右往左往しているのが見えた。正確な情報が掴めずに慌てているといった感じだ。すべての電話が使用中になっているほどである。


 建物内の喧騒を尻目に、佐世保と上社は地上に降り立つことができた。待ち伏せはない。敷地内は、少数の人と車が行き来しているだけだ。
 ただ、敷地外へのゲートでは、ちょっとした混乱が起きていた。警備兵が、敷地内に入ろうとする人々に厳しい検査をしていたのだ……。先ほどとは違う、張り詰めた空気が流れていた。
 2人は、変に怪しまれぬよう、恐る恐るかつ平然と近寄る。
「失礼」
先頭の上社は、警備兵にIDカードを見せつつ、何食わぬ顔でゲートを通過する。まるでいつも行き来しているかのように。
「ハイハイ。どうぞどうぞ」
警備兵は、敷地内に入ろうとする人への対応で忙しいらしく、何も注意を示してこなかった。後ろの佐世保に対してなど、軽く一瞥しただけで終わりだ。やはり、外に出る者に対しては警戒心が薄いものらしい。