ミニ・ギャングスタ・マイス
【6】従業員二人、作業をしている
従業員1 さっきの話なんだけど…。
従業員2 さっきの?
従業員1 ほら、駆除業者が従業員になりすましてるってはなし。
従業員2 ああ、それっすか。
従業員1 当ててみる?
従業員2 面白いですね。
従業員1 って言っても、私は見当ついてるのよね、これ。
従業員2 え、本当ですか。どうして見当ついたんですか?
従業員1 んー、女の勘、ってことにしておこうかしら。
従業員2 ん?
従業員1 ううん、気にしないで。
従業員2 でも、そうですね…。
○工場長と駆除業者が会話をしながら横切る
従業員2 小井原さんとか、最近入ってきて、なんかちょっと怪しいですよね。
従業員1 おお!
従業員2 おお!
従業員1 なかなかいい線いってると思うわ。
従業員2 いよっしゃ!
従業員1 でも、不正解かな。
従業員2 えー、違ったっすか。
従業員1 うーん、半分くらいかな?
従業員2 なにがですか?
従業員1 ひ・み・つ。
従業員2 あ、気になるやつだ。
従業員1 ふっふっふー。
従業員2 もう、自分から仕掛けといてー。
従業員1 秘密のある女は、魅力的なのだ。
従業員2 くっそー。ネズミ好きの貴婦人めー。
従業員1 んー、ネズミは好きってわけじゃないのよのよ。
従業員2 ん、でも、こっそりチーズじゃないですか。
従業員1 それは、彼らがかわいいからだし、何より噛まれたことないからかな。
従業員2 噛まれたこと?
従業員1 私、噛まれるとダメなのよね。それで犬も駄目になっちゃった。
従業員2 えー、もったいない。
従業員1 滅べばいいのに、犬、滅べばいいのに。
従業員2 まっくろっ、こっこっろっ、まっくろっ!
○中田・子積イリ、従業員二人は楽しそうに会話を続けている
中田 見つけた。
子積 あの二人かい、中田さん。
中田 殺るのは一人だ、子積さん。
子積 ターゲットは?
中田 チーザー。
子積 ヤァ。
中田 …。
子積 じゃあ俺は、ターゲットから隣のデカいのを引き離せばいいんだな。
中田 ごめんね、子積さん。
子積 任せろっちゅーの。要はタイミングだ。本物のデコイってやつを見せてやる。
中田 ありがとう。
子積 でも、中田さん。
中田 ん?
子積 ターゲットとタイマンになったところで、どうする? 我々の武器である圧倒的な数力も、ヤク入りチーズに潰された。死にに行くようなもんだぞ。
中田 …潰すよ。
子積 え?
中田 あのチーズの元を断たないと、全ての鼠が死んでしまう。俺たちの夢の国なんて、あったもんじゃない。
子積 …。
中田 俺は、リーダーだ。
子積 …。
中田 追い詰められた鼠は、猫をもだって噛み殺す。
子積 …はっ。
中田 よし、子積さんのタイミングで行こう。
子積 もう、昔のきみではないんだな…。
中田 いいかい?
子積 おう。
中田 ……。
子積 ……。(二人、息をひそめる)
○工場長と駆除業者が会話をしながら入ってくる
子積 …GO!!
○子積ハケ、従業員2のまわりを鼠が走る
工場長 んなっ、ネズミだっ!
駆・?・? え?
工場長 ほらっ、下っ!
従業員2 んわっ!
工場長 とうりゃ!
○工場長、鼠にとびかかるが避けられる
工場長 何をしとる! 捕まえんか!
従業員2 え、あ、はい!
工場長 お前もやらんかっ! 何のために高い金を払っとるんだ!
駆逐業者 え? う、うす!
○工場長・従業員2・駆逐業者、ドタバタする。従業員1、端に避難している
工場長 あ、こら、待てぇ!
従業員2 はあ、はあ!
駆逐業者 くっそー、何で俺が!
○工場長・従業員2・駆逐業者、鼠を追ってハケ
従業員1 …。
中田 …あんただろ。
従業員1 あら、また鼠だわ。
中田 俺たちに出来損ないのチーズをあげるふりをして、薬入りのチーズを与えてたのは!
従業員1 この子、例の頭の良い子じゃないかしら?
中田 そのチーズで俺たちの精神を侵し、自らトラップに嵌るように仕向けたんだ。
従業員1 そうだ、さっきのチーズ。
中田 お前のせいで!
従業員1 かわいいね、ほら、お食べよ。
中田 お前のせいで、どれだけの仲間が地獄にっ!
従業員1 …毒なんて、入ってないよ。
中田 ……。
従業員1 ……。
中田 ……。
○鼠、従業員1の手に持つチーズに近づく
従業員1 …ほら、いい子。
中田 ……。
○鼠、従業員1の指に噛みつく
従業員1 うぇあああああああああああああああああああああああああああああ!
○鼠、吹き飛ばされる
従業員1 うえっうえっ、っつう、んあぁ、クソがぁ! か、噛みっ、死ねクソ野郎が!
従業員1、妙なことを叫びながら、身の回りの物を手当たり次第に振り回す(投げつける)。
鼠、吹き飛ばされて壁にぶち当たると、一目散に逃げ出す。
○中田ハケ、従業員1はずっと暴れまわる
作品名:ミニ・ギャングスタ・マイス 作家名:月とコンビニ