婆ちゃんのラムネ
【3】大人と高校生は歩き続けていた。
●高校生、大人入り。
大人 それからよく通ってたなぁ。
高校生 魔法のラムネか。
大人 まだ続きがあるぞ。
高校生 うん。
大人 その日からしばらくしてな、ちょうど一年くらい経ったときかな。
高校生 梅雨の時期?
大人 ああ、その日も雨だった。
●高校生動きを止め、大人はそのまま歩き続けハケ
【4】雨の中走る高校生。必死の形相。駄菓子屋に着く。
●SE「ザァーーー」
●お婆さんは端で寝ている。娘が玄関に来る。
高校生 っはぁっっはぁっ! 婆ちゃん!
娘 待ってたわ。
高校生 婆ちゃんの?
娘 えぇ、娘よ。ほら、こっちにきて。
高校生 あの、連絡ありがとうございます。
娘 いいの、よく来てくれてたみたいだから。
●高校生、お婆さんのもとに近づく。
高校生 婆ちゃん……。
●高校生スポットライト。娘、お婆さんハケ。SE「ザァーーー」
●高校生、空を見てラムネの瓶を出す。雨を溜める。
【5】大人と高校生は駄菓子屋に着く。
●明転。大人入り。
大人 この駄菓子屋だ。
高校生 まだ残ってるんだ。
大人 今は娘さんが店主をやってるはずだよ。
高校生 あ、雨だ。
●高校生、手のひらに雨が当たる。
大人 ポツポツしてきたな。とりあえず入るぞ。
●大人、高校生は駄菓子屋に入る。
お婆さん いらっしゃい。そろそろ来るかと思ったよ。
大人 もうすっかりお婆さんですね。
お婆さん 来て早々いう言葉かい。
大人 あはは、お久しぶりです。
お婆さん 一年ぶりだねぇ。
高校生 初めまして。
お婆さん 息子さんかな。
大人 もう高校生ですよ。
お婆さん もう。あの時のお前さんに似てるんじゃないかい?
大人 そういえば同じくらいですもんね。
お婆さん 母も思い出しちゃうかもねぇ。
大人 かもね、婆ちゃんのお参りに来たんだ。
お婆さん わかってるわかってる。きっと待ってたよ。
大人 そうだ、この瓶に雨を入れてきてくれ。
高校生 わかった。
●高校生雨を入れに玄関に向かう。瓶を起きしゃがむ。その間に大人はお参りを終え戻る。
高校生 あれ? 早いね。
大人 そうか? 十分くらい経ってるが。
高校生 え?
大人 ずっと瓶眺めてたのか。
お婆さん 飲んでみたらどうだい?
高校生 え?
大人 そうだな、飲んでみろ。
高校生 う、うん
●高校生ラムネを飲む。
高校生 ……え?
大人 どうだ?
高校生 ラムネ、だ。
大人 すごいだろ。
高校生 ……魔法?
大人 はっはっは、魔法だってさ婆ちゃん。
高校生 わ、笑うなよ。
大人 あの日からそうなんだ。振らなくてもラムネになる。
お婆さん 本当に魔法かもねぇ。
高校生 そのお婆さんがラムネを降らしてるのかな。
大人 婆ちゃん、またラムネ、飲みに来るよ。