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連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話~55話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話
「無人の町、広野」
 

 こまかく降りしきる雨の中。帽子を目深にかぶり直した響は、
列車を見送った後、吸い寄せられるようにプラットホームの北の端まで歩く。
最北端に立った響が、言葉を失って思わずそこへ立ち尽くす。
足元を通過して、さらに北に向かって延びていく此処から先の線路は、
あの日以来まったく使われていない。
鉄の色を失ない、真っ赤に錆びついたレールが、深い眠りに落ちている。
枯れ草の間を、等間隔の2本のレールが立入禁止区域の
薄暗がりの中に消えていく。

(この先が、立ち入り禁止区域・・・・)


 闇の中へ消えていく2本のレールの延長線上に、赤と白に
塗り分けられた巨大な煙突がそびえている。
東京電力が所有している、広野火力発電所の煙突だ。
海上に張り出すようにして建設されている広野火力発電所は、福島第1原発から、
南21キロメートルに位置している。
福島第2原発は、9キロメートルという距離に有る。
これら3つの東電の発電所は、東北地方へ電力を供給しているわけではない。
首都圏へ電力を供給する目的のためだけに造られた、発電所なのだ。


 「驚いた・・・・でもあれは、福島原発の煙突ではなさそうです。
 ということは、東電が所有する火力発電所だ。
 それにしても、煙突からあれだけの勢いで煙が出ているということは、
 復旧が済んで首都圏へ電力を送るために、稼働をしているということになる。
 津波で住まいを失い、さらに放射能に追われて多くの人が仮設住宅で
 暮らしているというのに、あそこではもう、首都圏のための電力を、
 全力で生産をしているんだわ。
 なんという不条理だろう・・・・
 私には、とても納得することができない光景です。この景色は」