ついに勉強が始まった。
『でも、キリストは神を見ているんですよね?!』
『はい。キリストは最初の子ですからね。ずっと神と共におられますよ。』
『じゃあ、神を見たものはいるということですね。』
と私は気付いたよ~という表情でニコニコしてそう言うと、
『はい、そうなりますね。でも神を見たものはいないんですね。』
と意味不明な回答が返ってきた。
キリストは見ているのに見ていない…、なぜだろう…とまた疑問が出たけど言わなかった。違う角度から聞いてみた。
『聖書は神の言葉を書いてるんですよね。』
『はい。預言者たちは神の言葉を聞いてその言葉を記したんですね。』
『その書いた人たちは、神を見ているし声も聞いているんですよね?!ということは、神を見た人はいるということになりますね。』
と私の説明におばちゃんは顔を輝かせ、
『まあ、素晴らしい。私、そのようなことに気付きませんでした。そうですよね。そうなりますよね。』
と言ったので、私はこのおばちゃんを信じていいのか…と困った。
おばちゃんはもうこの宗教を四十年以上やっているとのことだったが、大丈夫なのか心配になった。
そして、おばちゃんは、
『神を見たものはいるということになりますね。…でも聖書を書き終えてからは、誰も神を見たものはいないんですね。』
と納得出来ない答えで終わった。
私が眉間にしわを寄せ納得出来ずに首を傾げていると、おばちゃんはニコニコしながら私の姿を見て、
『どうですか。納得出来ましたか。納得出来たと思いますが…。』
と言ってきた。
私は驚いて、
『出来ません、出来ません!!見た人がいるのに、聖書を書き終えてからとか境目を作って答えを変えるとかは納得がいきません。最初から言っていますが、科学的にちゃんと知りたいんです。』
と言ったら、おばちゃんの顔がまた豹変して、冷たい目付きになってあんなに開いていた目を細めて声のトーンは下がり、
『あっ、そうですか。分かりました。では、この答えでは納得がいかないと…。分かりました。あなたは勉強を始めたばかりですしね、分からなくて当然です。いずれ分かるでしょう。私たちのようには簡単にはなれませんからね。…では勉強を続けましょ。』
と言って次の質問文へと進んだ。
なぜだろうか、私は“我慢”と思った。
そして“これでいいのか勉強~!!”
と叫びたかった。
作品名:ついに勉強が始まった。 作家名:きんぎょ日和