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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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三度目の訪問。

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次の週もしっかりと同じ時間にインターホンが鳴った。
大人としては当たり前だが、律儀だなぁ~と感じた。
今回は、おばちゃん一人だけの訪問だった。

過去二回は玄関の扉を開けたまま話していたけど、今回は玄関の中で話した。
扉を持ち続けなくてよくなった。あれは重たかった…。

おばちゃんが、
『この一週間どうでしたか?!また何かありましたか?!』
と親身な顔でそう聞いてきた。
心配しているようにも感じた。
お母さんの言うように、話を聞いてくれるんだなぁ~と改めて思った。

私は、数年前から進化や温暖化について本を読んだりネットで調べたりしながら個人的に考えてきた。
そして自分なりに出た答えが、“進化ってないな。”ということに行き着いた。
(語弊があってはいけないので付け足します。自分なりにただ考えただけで本当の答えではないですよ。以上。)
そして宗教の人が来たので、お母さんには何でも答えてくれるということなので私は聞くことにした。

『あの~、また聞いても良いですか?!』
と尋ねたら、
『はい、いいですよ。』
と心から引き受けてくれるんだというように感じた。

『数年前から進化について調べたりしていて、自分で出した答えが進化はないと思ったんです。』
と私が言うと、おばちゃんの顔が輝いて、
『まぁ!そうです、そうです。進化というものはないんです。あなたは素晴らしい考えをお持ちですね。そうなんですよ。進化というものはないんです。神は初めから人を人の形に作ったので進化というものはないんです。…はい。』
そう言い切った。
所々疑問が生じたが私は続けた。
『私は進化はなくて適応だと思ったんです。』
と私が言うと、おばちゃんが肯きながら固まって笑顔だけが残った。
そして、小さな声で、
『はい…。』
と言って、沈黙が4~5秒続いた。
おばちゃんが何も言わないので、
『はい、適応だと思ったんです。進化は出来ないと思ったんです。後、答えをしっかりと知りたいので科学的に(化学)考えたいんです。…洗脳はイヤなので…。』
ともう一度私は言った。
おばちゃんは固まった笑顔で、
『はい。そうです、適応ですね。そうです、適応です。』
と言った。
私には人の気持ちを察してあげられるほどの能力も器もないので、その時は私の言いたいことをどうにか伝えて本当の答えを教えてもらうことに一心だった。
お母さんからの何でも答えてくれるというのを信じて、自分の思いを伝えるのに必死だった。別におばちゃんを困らせようとしていたわけではない。

私は自分の意見に同意してくれただけで嬉しかった。
しかしおばちゃんはそれ以上の言葉を言ってはくれなかった。
もっと進化はないということを詳しく説明して欲しいと思ったけど、おばちゃんに、
『そういうことも知りたいのでしたら、やっぱり勉強することをおすすめします。あなたには必要だと思います。お話を聞いていたらたくさんの疑問があるようなので、勉強してはどうでしょうか?!』
となってしまった。
『あの~、私は洗脳されたくないんです。無宗教ですし、無神論者なのでそういうことはいいです。聖書は自分で読みます。それに科学的に知りたいので…。』
と言ったら、
『あ~そうですか。でもですね、聖書というのは神の言葉なんですね。そして聖書というものは誰かの手引きがなければ理解出来ないようになっているんですね。その理解の手引きをするのが神の霊感を受けた私たちなんですね。私たちが教えなければ聖書を理解することは出来ません。霊感のない者が読んでしまうと間違った解釈をしてしまうんですね。それに聖書は科学的にも教えることが出来ます。科学的に証明していることもあるんですよ。なので、あなたは勉強をした方がいいと思いますよ。お分かりになりましたか?!』とおばちゃんは私にグッと寄り気味でそう言った。
『はい、でも洗脳されたくないので…。』
と言うと、
『はい、分かりました。勉強についてはその内でいいので、この一週間はどうでしたか?!何かありましたか?!』
と別人かと思うほどの変わりようでそう聞いてきた。
私は疑問に思いながらもお母さんとは毎日電話で話していることと、悪者について話していることなどを伝えた。

おばちゃんはそれを聞いて、
『それは良いことだと思います。』
と今までの話がなかったかの如く輝いた表情に豹変しそう言った。

そしておばちゃんは、
『先週伺った時の話ですけど、悪者が見えたとか大きな目をしていたとか…ありましたよね。』
と顔の表情を変え話し始めた。
私がはいと返事をすると、
『その悪者の姿の事でこういうものを持ってきたんですね。ちょっと目を通して頂きたいのでよろしいですか。』
と言っておばちゃんは数枚の紙をカバンから出した。

一度目に来た時に、聖書を持ってくるのを忘れたと言って持ってきていたカバンから聖書も出て来た。
どうしてだろうと私の頭に疑問が通りすぎてすぐに去った。

お母さんに勉強を教えている人もお母さんも、神様は心まで見るから嘘を付いても神様には全てバレるからと何度も何度も言われてきた。
その言葉が過ったからだろうと思う。
おばちゃんが嘘を付くはずがないと…。

そしてその紙を渡され読んだ。

私が見た汚らしい男の子と同じかと言われたらそれは分からなかった。
似たようなと言うか大きな目をしているというところが同じだけで、経験した内容が同じではないし、おばちゃんは、
『ここを読んでください。』
と文章の中に赤線を1~2行ほど引いた所を読まされた。
確かにそこには大きな目をしたと書いていたけど、文章全体を読むと疑問が出て来て腑に落ちないところもあった。

おばちゃんの言葉に私が首を傾げているとまた赤線の所を指さして、
『同じモノを見ていますよね?!』
と私の顔を覗き込むように言ってきた。
私がもう一度その文章を読もうとしたらおばちゃんはその紙を引っ込めて、
『同じものを見たようですね。』
と言って終わらせた。

どうしても私は肯定しないといけなかったようだ…。
難しい…。
まじめに話したいのか、雑で良いのか…難しい…。

お母さんの話では救ってくれるし何でも助けてくれるとのことだった。
私の話を聞いて欲しいのだが、謙虚な姿勢のようでおばちゃんのリズムに持って行かれてしまう。
どんな宗教か把握していない私の問題なのか、私が相手を思いやってあげないといけないのか三回目では何も分からなかった。

でもお母さんの言葉が頭を過るので信じる方向では進んでいた。

そしておばちゃんは続けた。
『この一週間考えてみたんですけど、やっぱりあなたは霊感がお強いんだと思います。このままでは私は心配なので、どうですか勉強してみませんか?!強要はしません。あなたがしたくなければ拒否なさって結構なんですよ。どうですか勉強してみませんか?!』
と結局この話に戻った。
『…あの~。』
『はい。なんでしょう。勉強してみる気になりましたか?!』
とおばちゃんは、“あの~。”とまだ何も言っていないのに急ぎすぎな早とちりだった。『いえ、そうではなくて。私は宗教とかは洗脳されたくないのでイヤなんです。』
『はい、分かりますよ。洗脳されたくないのですね。』
作品名:三度目の訪問。 作家名:きんぎょ日和