「蓮牙」1 蓮牙
ドーム天井の湾曲に従って建物は低くなり、けばけばしいネオンも消え失せる。その一角は誘導ビームも途切れ、空中に浮かぶ物もなくなる。
パラダイスに疲れた連中がちびちび酒を啜るために訪れる寂れた酒場、金のない連中の常宿になる年増娼婦の娼館、質の悪い薬を売り捌く闇商店、所有者の定かではない廃墟には薬物中毒者たちが転がって夢を見る。路地には主のいない廃棄セクソイドやキメラが徘徊していた。
二人組の賞金稼ぎは、おそらく賞金首なのだろう男を、街の外へ、「外壁」へと確実に追いやっているようだった。
蓮牙は低くなってきた建物の屋上から屋上へ、「外壁」に向かった。
そそり立つ壁が見えるところまでやってくると、規則正しく聞こえていた銃声がぱったりと止んでしまった。
もう仕留めちまったか?
蓮牙は足を止めて耳を澄ました。
「気」を澄まして気配を感じる。
空気の中に焦臭い臭いがした。
あっちか。
蓮牙は音もなく建物を飛び越えていった。