ついに来た。
『ちょっと貸してくだいます?』
と早口でまくし立てて、奪い取るようにもう手は伸びていた。
『はい、どうぞ。』
と渡したら、辞書の表示と中を見て、
『同じものですね。』
と愛想なく言った。
変わった感情の人だなぁ~と思った。
『綺麗に使ってらっしゃいますね。』
と言って返してくれた。
そしておばちゃんは優しい笑顔になって、
『誰かに教わってらっしゃるんですか?』
と聞いてきた。
『いいえ、一人で読んでます。』
と言ったら、顔が豹変して、
『あっ、そうですか~。でもですね、聖書は一人では理解できないんですよ。誰かの手引きがないと理解できません。』
と言い始めた。
私はこうなることは分かってはいた。
『はい、お母さんから聞いています。でも、一人で読みたいので一人で読みます。』
『そうですか~。でもですね、一人では聖書を理解出来ないんです。私達のような者が手引きをしてあげないと理解は出来ないんです。この本は神の霊感を受けています。私達も神の霊感を受けて伝えているんですね。だから一人では理解できないということが分かりますね。』
とどうしても私の言い分を受け入れてくれない。
『勉強したくなったら勉強します。』
とは伝えてみた。
『そうですか…。でもですね、ここに来たのも神の導きがあったからだと思いますよ。勉強してみる気になりませんか?!』
とおばちゃんも引かない。
『一人で読みたいので…、一人で読みます。』
『お一人で読みたいんですね。聖書を読むことはとても素晴らしいことだと思いますよ。』
と笑顔で言うとおばちゃんは続けて、
『でもですね、一人では理解できません。…勉強する気になりましたか?!』
と言うばかりだった。
今の今でどうしてそうコロコロ気が変わるのだろうこのおばちゃんは…。
私の言い分は変わらないのに…、どうして気付かないんだろうと思いながら聞いていた。
おばちゃんが、
『分かりました。勉強をする気はないのですね。…ではまた来週この曜日のこの時間に来ますね。この時間にいますよね?!』
と言い出した。
私もはっきり断ればと思いながらも何か拒否出来ない何かがあったので、
『はい、います。』
と言うと帰って行った。
そして早速お母さんに電話を掛けた。
『ほ~ら来た~。ねっ、見つかるでしょ!!』
と案の定のセリフだった。
『やっぱり勉強を進めて来た。』
『言ったでしょ。もう諦めて勉強したら?!来週も来ることだし…。お母さんが思うには、あんたは勉強することになってるんだよ。まっ、その頑張りもどこまで続くかな…。』と言いやがるだけで、情も思いやりも何もなかった。