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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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ついに来た。

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自分の家に帰ってきて半年ほど一人で辞書を読み続けていた。
分からない言葉が出て来た時はお母さんに電話して聞いていた。
その都度その都度、
『いずれ宗教の人が来るよ~。絶対一人じゃ理解できないんだからね!!』
と必ず脅しを入れてくるのが常だった。

そうこうしている内、私はお母さんの言葉で呪いをかけられたのか、だんだんと本当に宗教の人が来るんじゃないかと思い始めて怖くなった。
今まで無宗教で幸せに生きて来たのに、こんなことで宗教なんかに関わりたくないーっ!!
と思いながらも不安は消えずだった。

お母さんにも、
『その内来るよ~。辞書持ってたら絶対にばれるんだからね~。』
と言われるばかりだった。

お母さんの言い分はこうだった。
『神様が宗教の人たちにあの家に行きなさいと導くようになってるの。だからどんなに拒否しても絶対にばれるの。』
こんな話を何度も聞かされても、神様がいるとも思ってないし導きがあるとも思ってないし、大体そんなものを信じてないんだから言われてもとひたすら困っていた。
なのになぜか、宗教の人たちは来るんじゃないかとソワソワは増すばかりだった。
それとお母さんは、
『その宗教の人達にだけはどんな話も相談事もしていい。何でも話は聞いてくれる。』
と再三言われてきた。
本当だろうかと疑問はあった。

そしてお母さんのそれは的中することになった。

ある日のこと、ピンポーンと鳴った。
インターホンに出ると、見たことのないおばちゃんが立っていた。

『こんにちは、始めまして。』
と何かの営業での訪問のように感じた。
何者か分からないので私は、
『はい。』
と答えただけだった。
おばちゃんは、笑顔を崩すことなく、
『私達は今、有意義な過ごし方についてお話をお伝えしています。』
と言った。
私は、
『はい~。』
と理解に苦しんでいた。
おばちゃんはインターホンのカメラに雑誌を向けて、
『このような雑誌を見たことはありませんか?!』
と聞いてきた。
私はお母さんのところで見た雑誌を思い出した。
同じタイトルだった。
私は、”遂にこの時が来てしまった!!”と悟った。
そして私は諦めて、
『宗教の方ですか?!』(宗教名は書きません。)
と尋ねた。
『はい、私はその宗教の者です。』
声のトーンが高くなった。
どうやら喜んだようだった。
おばちゃんにちょっと待ってもらい、私は玄関へと向かった。

扉を開けたらインターホンのカメラに映らないところにもう一人女の人がいた。
おばちゃんに礼をしてもう一人の女の人にも礼をした。

『このような雑誌を見たことがありますか?』
ともう一度聞かれたので、
『お母さんが宗教の方から教わってます。私も“辞書”を持っているので一人で読んでます。』
といつもの癖で辞書と言ってしまった。
『まぁ、お母様が研究生なんですね!!』
『はい、そうです。』
『まぁ~、嬉しいです。』
とかなりの喜びようだった。
『この雑誌に書かれてある有意義な過ごし方とありますが、どう思われますか?!』
と聞かれた。
私は意味が分からなかったので、
『ちょっと分かりません。』
と答えた。
私はお母さんのどんな話でも宗教の人たちは聞いてくれるという話を覚えていたので、宗教ならば宗教と思い意を決して聞いてみた。
『あの~、ちょっと聞いてもいいですか。』
と口を開いた。
おばちゃんは、
『はい、よろしいですよ。』
と受け入れ体制だった。

『私の親は離婚してるんですけど…。』
といきなりの出だしで、宗教の二人は驚いていた。
そしておばちゃんは、
『それは、辛い経験でしたね。』
と神妙な顔になりそう言った。
私としてはもう慣れているのでそう言われる方が辛いかも…といつも思う。
『それで、今のお母さんていうのが元々お母さんの友達だったんですけど、おばちゃんたちとは違う宗教の本家の方でして、私のお父さんと浮気をして、それでの離婚なんです。』
と私はいつもの話なので淡々と話してはいるけど、二人の表情はどんどん困りまくっていた。
でも、ここを簡単に話してしまわないと、“何で?!”という疑問が出てくるのでさら~っと流す程度で私は話したかった。
そして続けて、
『それで、今のお母さんに“男はみんな浮気をする。あんたも浮気をされるの。”と言われ続けて、私は働いてないんですけど、“あんたは働いてないから絶対に捨てられる。”と言われて、付き合ってる方がいるんですけど、彼氏は浮気なんてしないし私もそんなことしないと言っているんですけど、“彼氏はあんたを捨てるの。あんたも浮気をするの。あんたにだって出来る!!親の子だから出来る!!”と10年以上言われて、未だに籍を入れられずなんですけど、これはどうしたらいいですか?!』
と私の話をしたら、やっぱり宗教の人でも困っていた。
お母さんの話では聞いてくれると言ったのに…。
『これもやっぱり悪者のせいですか?!』
と聞いたら、
『まぁ、そんな言葉まで知ってるんですね!!そうです、そうです、それは悪者のせいです。』
と言われた。

悪者とは簡単に言うと神様とかいい者の反対で、神様に反発している者達のことだとお母さんから習った。

続けておばちゃんは、
『お辛い思いをして来たんですね…。』
と親身な顔でそう言った。
『はい…。でも今は離婚についてはそうもないです。ただ、今のお母さんに“あんたは変わってる。おかしい。”と言われ続けて、浮気とか不倫を強要してくるので、出来ないと言っているんですけど、…しないといけないですか?!』
と私が言うとおばちゃんももう一人の人も困って、慌ててしまった。
そして、おばちゃんは、
『その話は今は置いておいて、聖書を持っているとのことですが…。』
と話を切り替えてきた。
『はい、辞書を一人で読んでます。』
と言うと、おばちゃんは肯くだけで、困り顔だった。
もう一人の女の人が、
『辞書?!』
と聞いたので、自分が間違った事に気付いた。
『あっ、聖書です聖書。それとまた別の黄色い本ももらいました。』
と言ったら、女の人が、
『これのことかなぁ~?!』
とカバンから取り出して見せてくれた。
『そうです。それです。』
と肯いていると、おばちゃんが口を挟んだ。
『聖書をお持ちなんですね。』
『はい、お母さんが宗教の方に頼んでもらいました。』
と言ったら、おばちゃんはニコニコ顔で肯いたのに、瞬時に、ニコニコ顔は消え覗きこむように、
『私、車に聖書を忘れて来たのでちょっと持ってきてもらえません?!』
と厳しい目付きをしてそう言った。
そのおばちゃんの言葉に女の人は、ギョッとしておばちゃんを見ていた。
私は、その表情も見ながら、ニコニコと、
『はいっ!』
と言って、扉を支えていた体をどかした。
扉が閉まりそうになったので私が開けようとしたら、おばちゃんが体ごと乗り出して閉まる扉を右半身で支えた。
扉の威力が大きかったようでおばちゃんはグラついてしまった。
でも、笑顔で、
『聖書をお願いします。』
と言った。
女の人はその一部始終ギョッとしておばちゃんを見ていた。
変わった人たちと思いながら辞書を取りに行った。

辞書を取りに行っておばちゃんに見せたら、笑顔は消え、
作品名:ついに来た。 作家名:きんぎょ日和