私の読む「宇津保物語」 蔵開きー2-
畳は、紺色の真綿で造った薦畳に紫の裏を張って、唐錦の縁を付けた。
畳に重ねた茵、白綾で造った筵、簀の子にも同じようにした。
線香木の机、銀の容器、黄金の杯。、火桶は香料の沈で造り外側を檜色にして仕上げて内側には金箔を貼った。火を入れ鉢は銀で造って内側は黒にした。鳥の卵を赤く塗って炭火の替わりと見なした。
こうして。、正頼の子供達が全員出席した。上達部
は上に、子供達は簀の子に座る。部外の者はまだ来場しない。涼は仲忠に。、
松風をはらめる君も得てしがな
生まれたる子のあえ物にせん
(松風をはらむ貴方もお出で頂きたいものだな。生まれた子が貴方にあやかるように)
どうぞお出で下さいませ。
と、送った。仲忠は、
「このように言われる前に参上しようと思っていたのに」
と、返歌は、
秋風をあゆとや知れる君が子は
千歳をまつの野わきとぞ聞く
(和(あ)えることをご存じのお子さんは、千年も経た松に吹く野分けのように末が長いでしょう)
すぐにも参上するのに、和え物だと仰ったので心がひけて伺うのが恥ずかしいです。
「涼の所は人目が多くて恥ずかしいところだ」
仲忠は紅の装束で身を整えて参上する。涼は喜んで 階段を下りて迎える。庭前には楽師達が幕内にいて、近衛の者達が松明を点していた。
蔵開き中終わり
作品名:私の読む「宇津保物語」 蔵開きー2- 作家名:陽高慈雨