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私の読む 「宇津保物語」  田鶴の群鳥

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 都の北端一条通から中央の四条通りから北側、壬生二条より東、京極より西、ということは右京の北半分は婿達の家のほかに他人の家はなかった。正頼一族の男の子の家は、婿達の家に混ざることなくある。藤中納言と右大辨藤英はまだ自宅がない。それで正頼の屋敷内に二人は住んでいた。


絵解
 画面は正頼の住居。大宮三条が表になる。

 中の大殿は女一の宮と仲忠夫婦。一の宮は歳が十七歳、中納言仲忠は二十二歳、並んだ雛人形のような美しさである。食事の台を据えて料理が運ばれる。

 女一の宮が琴を弾いている。中納言が笑って、

「恥ずかしくもなくお弾きになりますね」

 宮、
「あて宮の傍にいましたので習い覚えました」

 宮は身ごもっておられる。

 東大殿、右の画より二年後になる。春宮のお方あて宮が妊娠で里帰り。すでに子供二人、上の子供は第一皇子は三歳、立って歩く。乳母は三人。

 もう一人は這い回る二歳。乳母の数は同じで三人。あて宮十八歳、仲忠二十四歳。

 南大殿には、昔のまま仁寿殿女御のお住まい。

 北大殿は、大宮と正頼が住む。

 敷地の東南側、東大殿、民部卿の宮のお方(五姫)がお住まいである。

 西の大殿、兵部卿の宮のお方(正頼十一姫大イ殿腹)と暮らす。宮は二十七歳、女君は十八歳。結婚から二年目に当たる。食事をしている、女房が二十人、童、下働きが大勢いる。

 北東の大殿、左大臣(忠雅)のお方。六姫

 西南の大殿、藤大納言(忠俊)のお方。

 西北の対、源中納言(涼)のお方七君(今宮)。十七歳、涼は二十五歳。中納言と二人話をしている。女房が大勢いる。紀伊の守種松(涼の祖父)が来て、簀の子にいる。中納言が応対している。
絹・綿・唐櫃を積み上げて、贈り物している。

 次の画は、大イ殿の腹の姫達が住む西南の区画。
中務の宮の北方、二姫は西の隅。

 平中納言の北方(十二姫)東の対。

 頭宰相実正の北方(三姫)西の隅。

 源中将実頼のお方(四姫)西北隅。

 良中将行正の北方(十三姫)東中の隅。子供達もいる。女房二十四人、童と下働きが大勢である。

 この画は、左大辨師純のお方が住む、子供達も住んでいる。 

 西北の区画。右大辨藤英のお方(けす宮十四姫)
が新しい几帳・屏風を立てて、新調の調度品が清らかに並ぶ、衣掛けに色々の衣が掛けてある。

 一つの台に食事を用意して藤英の許に運んでくる。北方は黄金の器を使っている。歳は十三、女房ほか下働きまで大勢が働いている

 藤英は厨子を出してきて本を読んでいる。

 大宮の子供達、大イ殿の子供が集まって読書をしている。右大辨藤英が宮中から下がってきた。

 藤英の装束は清らかである。車も飾りもないがそれが却って美しく見える。供は四十人ばかり。大学衆が跪いて迎える。

 学者の藤英は、集まった正頼の子供を、宮の腹、大イ殿の腹と区別することなく平等に誰にでも漢詩漢文を読ませるのである。破子(わりご)やすばらしい珍しい物が置いてある。講義を聴く者たちが大勢集まり書物を読んでいる。秀才が大学寮に書籍を取りに行かせる。


 この画は藤英が自室で十四姫けし宮と話をしている。

「今日、春宮へ参内したところ、兵衛の君(正頼の二男)を通じて貴女へ伝言がありましたよ。
「命なりけり』ですね、こんな結構な機会にも恵まれるのです」

 と言って、大学に向かった。

 この画は、女御の君(大宮の一姫)の四人の親王の方々。
 仁寿殿女御は自分の子供男四人と左大臣忠雅の娘の子供。そのほかの夫人の子供で歳十六の男の子が一人。また、六番目の皇子民部卿実正の北方は、正頼の三姫である。妊娠している。
 三番目の皇子は妻がいない。八宮はまだ童である。

 この画は、
 権中納言忠純(正頼の長男)。北方は源氏初代の娘である。歳は二十八、子供は四人。一番目の子供は姫で、三人は男の子供、太郎君は十四歳、次郎君は十三歳で嵯峨院大后の祝いの席で舞を舞った。

 左大辨(正頼次男)。北方は平中納言の中の姫歳は二十六。男の子ばかり五人ある。

 三郎祐純宰相中将の北方は、源氏の家の娘で歳は二十三、子供三人。

 五郎頼純の北方は近江の守の娘で、橘氏、歳は十五、子供はない。

 四郎連純左衛門佐の北方は、民部卿の娘で、歳十五。妊娠中である。

 六郎兼純兵部大輔の北方は、式部卿宮の娘、歳二十二。子供は三人。
 
 十二郎行純はまだ童である。

 十一郎親純、大イ殿腹、行純と同年齢、童である。

 正頼が広大な御殿を構えて子息を置いて、他所へ移ることを、『子供とは思わぬ』と言って禁じ、傍らに置いた。その殿方も今は成長して孫も出来て住む人間が増え、また姫の婿君達も同居する。

 広大な邸宅も狭くなるのは当然のことで、それでも皆さんは我慢してお住みになる。区画毎に門を建て、各家の表にも門構えをして、馬や車の出入りが、日に百回を超える。

 あれほど広かった屋敷も隙間がなくなった。

(田鶴の群鳥終わり)




この章「田鶴の群鳥」は正頼の大勢の娘の結婚、
婿となる男の紹介。正頼に住む一族の屋敷の場所、子供達(正頼の孫)達のこと、煩雑で、整理するのに困る。

 あて宮に狂った男達のその後を書いて作者はこの章を締めくくった。