私の読む 「宇津保物語」 あて宮
こうして大宮が臍の緒を切りになった。
乳をふくませる役は長男忠純の北の方、お湯に入れる役は、内蔵助の女房、お誕生の祝いの本を読むのは式部大輔(だいふ)、御子の乳母は三人で、一人は皇族の血を引くもの、残り二人は太宰大貳の娘。
始めて乳を与える者に、禄を与える、夏冬の装束。上等な絹、綾を箱に畳んで入れる。
本を読んだ式部大輔に、女の装束一具と良馬二頭に牛二頭を与えた。
絵解
此処は中殿の産屋、几帳を立ててあて宮が白い寝間着で臥している。乳母も白い綾の袿一襲、白綾の裳、唐衣を着る。年が廿で綺麗な女である。
この画は、贈り物が山とある。人々が食事をしている。大宮、長女の仁寿殿女御が居られる。
悪霊よけのために米をまき散らす、打ち撒きをしている。式部大輔の本読み。忠純の北方の乳つけに参上した。左衛門の尉弓引き(悪霊退散の)。
この画は湯殿。助の女房が、薄物の袿に、湯巻をして湯殿に現れる。銀の缶に湯を入れて運び込まれる。迎え湯を、助の女房を補助する内侍の助が注ぐ。
誰それの上達部、親王達、殿上人がこちら側に控えている。銀製の笥に碁代の銭一貫を入れて積み上げる。上達部に五笥、殿上人五位に三笥、六位以下に一笥。
この画は、宮の使いに被物与える。人々に被物を与えている。
このようにして月日が経ち、春宮からあて宮へしきりに宮へ戻るように言われるので、師走になって宮へ戻る。
翌年の三月頃にあて宮は再び妊娠する。この度も男子が授かる。産養は前回同様である。
少しして春宮の許に帰る。このようにしてあて宮は限りなく輝いていた。
(あて宮終わり)
作品名:私の読む 「宇津保物語」 あて宮 作家名:陽高慈雨