私の読む 「宇津保物語」 祭りの使い ー2
「私のせいにするのは変ですよ。それでもあのような人には、まだ返事をしない方が良いですよ」
「どうしてそんなに冷淡なのです。そうでも無いようにお見受けいたしますよ」
「こちらが、心に掛ける人には、時々返事を書きますがね」
それ以上あて宮は言わなかった。
兵衛良佐行正、思い悩んでただ、
数ならぬ身をはつ秋のわびしきは
しぐれも色にいでぬ成りけり
(数の中にも入らないような私にとって、時雨があっても紅葉することが出来ない事です。顔色にも出せないわびしさです)
と申し上げたが、あて宮からの御返事はなかった。
(祭の使 終わり)
作品名:私の読む 「宇津保物語」 祭りの使い ー2 作家名:陽高慈雨