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連載小説「六連星(むつらぼし)」第36話~40話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第36話 
「被災地、石巻にて」

 「さすがに東北の朝だ・・・
 関東は間も無なく桜の便りが届くと言うのに、ここはまだ冬の朝です。
 昨日着いたときはうす暗くてよくわからなかったけれど、
 よく見ると、ずいぶん空き地が目立ちますねぇ」

 明るくなってきたのを見計って、響が散策に出た。
ホテルを出た瞬間、東北の寒さに思わず立ち止まり、あわてて襟を立てた。
ぶるっと身震いしたあと、白い息を吐きながら駅に向かって歩き出はじめる。
前方に、アーケードに覆われた商店街が見えてきた。
角を曲がろうとした瞬間、後ろから響を呼ぶ声がきこえてきた。
マフラーを片手に持った英治が、息を切らせて全速力で駆けてくる。

 「忘れものだ、響。無茶をするなよ。
 東北の寒さの中を、無防備で出かけるにも限度が有る。
 目が覚めたらもう居ないし、窓から覗いてみたらマフラーもしないで
 背中を丸めて歩いているお前の姿が見えた。
 仕方ないから、大急ぎで着替えて、こいつを持って飛んできた」