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あたたかい場所

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コウスケ 好きなように・・・
レイ   えぇ
ここではそれが何よりも大切です
好きなことを、好きなときに、好きなだけやる
ほかのものは何もいりません
そういう所なんです
タツヤ  ちなみにボクたちもここに住んでいる組みだよ!
     基本的には遊んでるかな
     散歩したり、絵描いたり

 コウスケ 切羽詰ったように

コウスケ あの、好き勝手にやって、誰からも何も言われないんですか?
レイ   何も・・・というと?
コウスケ あ、いや・・・
     好きなことをしたら、『やめろ』とか『駄目だ』とか言われないんですか・・・?
     俺・・・そういう風に言われることが多くて・・・
タツヤ  同じだ!
コウスケ 同じ?
タツヤ  うん!ボクもそうだったんだ
     ううん
     ここにいる皆もそう
     似たような経験をしてきた
     だからここにいる皆は、君がすることを否定なんか絶対にしない!
     安心して!
コウスケ ・・・・はい(不安そう)

 タツヤ 穏やかに

タツヤ  ねぇ、コウスケ君
ちょっと僕たちの話を聞いてもらえるかな?
     きっと君たちの役に立つと思うんだ

 コウスケ ミリヤを見る
 ミリヤ コウスケにうなずく

コウスケ ・・・お願いします
タツヤ  うん
     ボクたちはね、1ヶ月くらい前にここにきたんだ
     今は、楽しく暮らしているけど
     施術が終わったばかりの頃は、コウスケ君たちと同じで不安もあったんだ
ミリヤ  タツヤさんが
レイ   想像できないでしょ?
タツヤ  ちょっとレイどういう意味?
     まぁいいや
そもそも、なんでここに来たのかというと・・・
親から逃げてきたんだ
駆け落ち
     ボクの家族が、レイのことを認めなかったから

 間

タツヤ  あのね、ボクの家は少しお金持ちで、歴史なんかもあって
     所謂、由緒正しき家系、だったんだ
レイ   それに比べて、私は孤児院で育った身寄りのない人間でした
     だから、彼の家の人に受け入れてもらえなかった
ミリヤ  レイさん・・・
タツヤ  馬鹿馬鹿しいよね
     家と世間体のことしか考えてないんだもん
     孤児院出の捨て子だからって言う理由で、レイの存在を否定したんだ
コウスケ 存在の否定・・・
タツヤ  自分の親ながら、呆れたね
それからは、もう説得の嵐
『お前のためなんだ』
     『目を覚ませ』
     『このままだと不幸になるぞ』
     そんなことばっかり言われた
     もう我慢できなかったよ
     それまではね、親の言うことには従ってきた
     勉強だって頑張った
     習い事だって、一生懸命やった
遊ぶことは許されなかったし、友達だってつくれなかった
     操り人形だよ
     親の敷いたレールをただ歩いているだけだった
     楽しいなんて思ったこと、一度もなかったな
     ・・・悲しいとも思わなかった、思えなかった
     心が死んでた

 レイ タツヤの手を握る

タツヤ  そんな時、レイと出会ったんだ
     レイは、すっごく・・・何ていうんだろう・・・
     生き生きしていた
     友達も多くて、皆から慕われていて
     毎日が楽しそうで、自由で、ボクにないものが全部持ってた
     すごく惹かれた
そしたら、レイもボクのことを見てくれて
     世界に色がついたなんて、上手いことを言うよね
レイと出会えて、あぁ・・・こういうことかってわかって、感動した
     感動したんだ、生まれて初めて
ミリヤ  ・・・素敵ですね
タツヤ  うん!レイは素敵なんだ!
     だからボクは、彼女と生きるために全部忘れることにした
     忘れるために、ここにきた
     レイが連れてきてくれたんだ
ミリヤ  レイさんが・・・
レイ   貴方達は、ミリヤさんが?
ミリヤ  はい
レイ   コウスケさんのことが、本当に大切なんですね
ミリヤ  ・・・はい
コウスケ あの、すみません
     俺、わからないところがあって
タツヤ  ん?
コウスケ 忘れるというのは、てっきり存在自体・・・
     タツヤさんの場合は家族を忘れることだと思っていたのですが
     ご家族のことを忘れたわけではないんですね・・・?
タツヤ  うん
     ボクは家族のことは忘れていないし
     今までの苦しかった記憶を無かったことにしたわけじゃないんだ
コウスケ ・・・なるほど
     じゃあ、何を・・・?
タツ   忘れたものはね
     『他人から受ける、負の感情』 
コウスケ 他人から受ける負の感情
タツヤ  こればっかりは自分が体感しなくちゃわからないと思うけど・・・
     例えば・・・そうだな
     ボクの場合は、家族からレイとの交際を否定されたり・・・親の人形だったり
それが嫌だったんだ
だから、その嫌だって気持ちを忘れたんだ
ミリヤ  嫌だという気持ち
タツヤ  うん
     本当に、押しつぶされそうだった
     嫌で、逃げたくて、目を背けたくて
     でも、考えれば考えるほど、どんどん大きくなって
コウスケ ・・・わかります
タツヤ  うん
     それがあるせいで色々と迷ったりした
     本当に、いいのかな、とか
     苦しかった
     だけどボクには
     レイと生きていくと決めたボクには、その感情は必要なかった
     だから、全部忘れたんだ
     ボクの心に、その感情は存在しなくなったんだ

コウスケ・ミリヤ 飲み込もうとする

タツヤ  こんなこと言うと、もしかしたら困らせちゃうかもしれないけど
     幸せは人それぞれで、受け手によってそれは正解にも不正解にもなる
     忘れることは、誰かにとっては間違いっだって思われるかもしれない
     でも、正しい正しくないでものを決めていたら、ボクは幸せになれなかったと思うんだ
コウスケ タツヤさん・・・
タツヤ  忘れることで、ボクは今とても幸せになれた
     ボクにとっての正解は、忘れることだったんだ
・・・ごめんね、上手くいえなくて
コウスケ いえ・・・
タツヤ  えっとだから・・・んー・・・
レイ   私にタツがいるように
     タツに私がいるように
     コウスケさんにはミリヤさんがいる
     それが何よりの幸せ
     そう思ったからここにいる
     そうですよね?
コウスケ はい
レイ   いっぱい悩んだ末の選択だったと思います
でもこの選択は、きっと正しかったって、そう言い切れる日がくると思うんです
私達がそうでした
だから、大丈夫ですよ
コウスケ ・・・・
レイ   ミリヤさん
     コウスケさんは忘れたばかりですし、まだ感情のカケラは残っていると思います
     彼が不安になったときは、支えてあげられるのは貴方だけです
作品名:あたたかい場所 作家名:ころん