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あたたかい場所

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     わざわざ手間をかけて
コウスケ ・・・
観測者  知ってるよ?
     いろいろ動いていたこと・・・
     ミリヤちゃんが君をここに連れてくるように仕向けたり
     彼女の消息を親しい人にばれない様に準備もしてたんだろう?
     結果、彼女に会いに来る人はいないからね
     ・・・まったく、どうやったんだか
コウスケ そこは・・・ご想像にお任せしますよ
観測者  で、どうして?
コウスケ 珍しいですね、先生が他人に興味を持つなんて
観測者  ただの好奇心だよ
コウスケ 別に、俺が忘れたかったんですよ
     負の感情を
     ただ単に
     本当に苦しかった、辛かった
     だからです
観測者  それだけじゃないでしょ?
コウスケ ・・・・・
     ミリヤは、他人に何かをしてあげる事に幸福を感じていました
     必要としてもらえることが喜びでした
     今までの人生、頼られるタイプではなかったみたいですし
     それなら、俺が患者となって
     ミリヤに依存するかたちになり、頼られているんだ実感できるほうが
     彼女もより幸せになれると思ったからですよ
観測者  それから?
コウスケ ・・・・・
観測者  ・・・・・
コウスケ ・・・・・これは、俺の身勝手ですから
     彼女は、俺と出会わなければ普通の幸せを掴んでいたと思うんです
     優しい両親がいて
     明るい友達に囲まれ
     素敵な旦那さんと出会い
     可愛い赤ちゃんに恵まれたでしょう
     でも、俺と出会ってしまって
     優しくしてしまって
     愛してしまって・・・
     俺に捕まってしまった
     道ずれなんです
     可哀想なんです
     なら、俺が出来る範囲の『普通の幸せ』というものを、与えてあげたかった
     俺がそれを望むなんて、おかしいことはわかってるんです
     でも、壊したくなかった、彼女の心を
     笑顔を・・・作り物にしたくなかった
     中途半端なんです
     レイさんのようになれない・・・
     まだ・・・未練が・・・
観測者  ・・・・
コウスケ 俺だって・・・
     俺だって!
     出来ることなら、施設の外の世界で幸せになりたかった!
     ミリヤと普通の幸せを築いていきたかった
     でも・・・もう、無理だったんだ
     戻ることは出来なかった
     ・・・戻れるわけねぇだろ
     ここは居心地が良すぎた
     自分でこの幸せを捨てて、また頑張ろうなんて
     俺が思えるはずがないんだ・・・
観測者  ・・・・

●音響 時計の音が止まる

 ミリヤ 目を覚ます

観測者  やぁ、ミリヤちゃん
     おはよう
     気分はどう?
ミリヤ  ・・・・?
観測者  あぁ、覚えてないか
     僕はここで先生をしています
     先生って呼んでね!
     わからないこと、困ったことがあったら何でも聞いて構わないから

 観測者 ミリヤの脈やなどを診る
 異常がない

観測者  うん
     大丈夫みたいだね
     安心していいよ
ミリヤ  ・・・・
観測者  じゃあミリヤちゃんも目を覚ましたことだし
     僕、タツヤくんたちのところにもう一度行ってくるね
     またね

 観測者 上手にハケようとする

コウスケ でもね、先生

 観測者 コウスケをみる
 ミリヤ コウスケを愛おしそうに見つめる

コウスケ このミリヤを見て
     彼女は俺のものなんだって思うと・・・
     嬉しくてたまらないんだ
     俺は、狂っていますか・・・?
観測者  おめでとう
     コウスケ君

○照明 暗転



      了
     
作品名:あたたかい場所 作家名:ころん