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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話 
「梅とキンモクセイ」

 水道山公園の展望台からは、
桐生の市街地のほぼ全域を見下ろすことが出来る。
足元の山麓から、低い屋根の民家が、幾重にも重なっていく。
市街地の中心部にも、高いビルは見当たらない。

 熾烈を極めた第二次世界大戦。
終戦の間際、群馬県の太田市や前橋市はB29の爆撃を受けた。
当時における国内最大の航空機メーカー、中島飛行機の工場が狙われた。
だが、桐生の町は、奇跡的に爆撃を免れた。
そのために、昭和初期の建物が無傷のまま数多く残っている。

 ひとつだけ例外的に、ポツンと高層マンションが建っているのが見える。
JR両毛線の高架に伴ってあらたに建設された、ただひとつの高層物だ。
俊彦が住む市内北寄りの本町1丁目と、2丁目には
450軒あまりの民家と、工場や商家が密集をしている。

 大半が、戦前からの建物だ。
中には、大正や明治時代に建てられた蔵や織物工場なども有る。
夜景を見降ろしたとき、どことなく明かりがとぼしいと見えてしまうのは、
古い建物たちが醸し出す、桐生独特のこうした街並みから生まれてくる。