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人でなし(?)の世界にて

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 舗装された山道の途中に、コンクリート製の高い塀に囲まれた住宅街があった。塀の中の様子はよく見えないが、立派な屋敷が建ち並んでいる。先ほどの中流家庭の住宅街とは、雰囲気も格も違っていた。
 そこは、ゲーテッドコミュニティという高級住宅街であった……。ただの高級住宅街ではなく、犯罪者や貧乏人を中に入れないよう、厳重な警備で守られている特別な場所だ。大富豪が住んでいる要塞の町だ。
 もちろん、アンドルーズの収入ではそこに住めないし、住民に招かれたこともない。

 高い塀と頑丈なゲートのおかげで、リザードマンの襲撃にも耐えられているだろうと思った。もし内部にこっそり潜り込めれば、一安心できるだろう。また、もしかすると、追加の警備員として雇って貰えるかもしれない。
 だがそんな期待は、ゲートまで来たときに瞬間に打ち砕かれた……。アンドルーズは車を止めて、ゲートのほうを見る。

 鋼鉄製のゲートは開け放たれ、町の道路は肉片と血で汚れきっている……。リザードマンの姿はなかったが、ヤツらの襲撃を受けたことは明白だ。
 ……どうやら、内部に感染者が出たらしく、リザードマンとなって暴れ始めたようだ。しかも、外部に急いで逃げようとしたバカがゲートを開けてしまい、リザードマンの入場を許してしまった……。そうなってしまえば、地獄絵図になることは当然だった。高い塀のせいで、逃げ場は無い。追い込み漁にかかった魚たちのように襲われていっただろう……。
 そのゲーテッドコミュニティも、彼が住んでいたサクラメントのように死んでいた……。リザードマンの気配は感じるが、人間の気配はまったく感じられない。

 ただ、ゲーテッドコミュニティに一度も入ったことが無い彼は、ゲートが開けたままになっているこの機会を使って、入ってみたくなった。もちろん、平時ならば不法侵入になるかもしれないが、この非常時に監視カメラもクソあったものではない。
 それにもしかすると、金に力を言わせて、物資を大量に備蓄しているかもしれない。それが余っているのならば、少しぐらい拝借しても構わないだろう。
 彼は、これはただの好奇心ではなく、生き残るためだと自分に言い聞かせると、ハンドルをゲートのほうへ切った。

 ……ところが、車の向きをゲートのほうへ向けた次の瞬間、彼は急ブレーキを踏んだ。
 ゲートの向こう側の道路に、リザードマンが数体闊歩していたのだ……。どこかに人間がいないかを探しているように見える。おそらく、ここの住民を殺したヤツらだろう。
 アンドルーズは、助手席に置いてあるショットガンを手にした。そして、あのリザードマンたちを駆除するか、このまま立ち去るべきかを考える。弾薬と自信はあるが、他にもリザードマンたちがいた場合のことを考えると、踏み出せなかった。