愛されたがりや
そこには、帯広で見た空とは違う空が広がっていた。
どこも空は同じだというのに、星はまばらで淋しげに瞬(まばた)いていた。
まるで、私を心配している父の顔にもみえた。
淋しげに笑っている、父の顔。
優しい顔―――。
あんなに別れを怖がっていた私が、今は夏樹の言葉を反芻しながら、ゆっくり咀嚼(そしゃく)している。
勿論、すんなりではないものの、夏樹との別れを受け入れる自分がいる。
たぶん、ずっと前から分かっていたのかもしれない。
夏樹から、別れ話を告げられた時から。
けれど、くだらないプライドが邪魔して、私はただただ空白の時間を過ごすと知っていながらも、別れたくない一心で全身全霊を傾けていた。
ムダな時間、とは言わないものの、夏樹には沢山の迷惑を掛けてしまった。
納得し出すと、夏樹との別れは自分に非があったのだ、と思う心が少しだけ芽生える。
不思議だった。
ちょっとずつ、大人になれる気がした。
夏樹に言われたことが、全て直るかと言ったら自信がない。
けれど、またいつか夏樹に出会えたなら、その時は恋に自立した女でありたいと思う。
その時は……。
でも、今はちょっとだけ泣きたい。
ちょっとだけ、甘えさせて。
ちょっとだけ……。
ねぇ、お父さん?
私、これからどうしよう?
夏樹と別れても、ちゃんとやっていけるかな?
一人で……。
って、そうか。
私、一人じゃないんだもんね。
お母さんも、お兄ちゃんも、佑斗もいる。
それに、お父さんも……。
今度また、近くに実家に帰るよ。
お父さんに会いに。
って、いないんだった……。
バカだね。
アタシって……。
ホント、バカだね……。
アタシって……。
ごめん。
ごめんね……。
ホント、こんな娘で。
許してくれるかな?
お父さんの娘に、生まれてきたことを。
そして、またお父さんの娘として生まれてくることを。
許してくれるかな?
もし、許してくれるなら、今度は私がお父さんのことを誰よりも愛してあげるからね。
お母さんよりも。
ねぇ、いいでしょ……?
まばらに見えていた星達は、今は所狭しと犇(ひし)めきながら瞬(またた)いていた。
まるで、父が微笑んでいるみたいに―――。