愛されたがりや
部屋に戻った私は、二度目の脱力感を味わう。
疲れた〜。
そう呟いて、床にペタンと座った。
久し振りに長時間立っていたため、足が張って痛みが生じた。
はあ〜、疲れた……。
もう一度呟き、さっき買ってきたばかりのペットボトル入りのお茶を半分ほど一気に飲んだ。
どうやら、ノドが物凄く渇いていたらしい。
すぐにそのお茶は空になり、二本目の炭酸飲料のペットボトルに手を伸ばした。
本当は、もう飲みたくなかった。
炭酸飲料だって、ここ数年は飲んでいない。
それなのに、飲みたくもないジュースを買い、そしてそれに手を伸ばし今飲もうとしている。
そんな自分に嫌気がさす。
嫌気がさして、虚しい。
飲みたくない。
なのに、身体がそれを欲しがっている。
苦しい。
苦しくて、苦しくて、どうしようもない。
ラクになりたい。
でも、ラクになるすべを知らない。
心に小さな疼きを感じた。
私の中で、ウニョウニョと何かが蠢(うごめ)いているような、もがいているような、這(は)い蹲(つくば)っているような、そんな言い様もないもどかしさが襲い掛かる。
そして、それらは移動を繰り返すたびに、私にチクチクと痛みを与えるのだった。
これでもか、というように―――。
あっという間に、炭酸飲料の入ったペットボトルは空になっていた。
飲み終えたあとの後味が、無性に気持ち悪かった。
それを飲んでしまったことに後悔すると、今度は胃に入れたものを綺麗に出したくなった。
胃の中にある異物感を取り除きたい衝動に駆られる。
それなのに、胃に一度おさまってしまった異物は、どう足掻(あが)こうとしたとしても私から出てこようとしない。
我が物顔で、私の中でのさばり続ける。
唯一、それらを強制的に取り出す方法。
それは、自分のお腹を切り裂くしかない。
けれど、私にはそんな勇気はない。
臆病な性格なのだ。
だから、身体の内側から生じる痛みに我慢出来ない私が、外側からの痛みに耐えられるはずがない。
なのに、この苦痛は時間(とき)を追うごとに増してくる。
発狂しそうになる。
でも、それを制するもう一人の自分。
今の私は、心と身体がバラバラだ。
心と身体がチグハグで、どうやって一緒にさせようとしても互いに違和感を覚えてしっくりこないだろう。
そんな身体で、何が出来る。
きっと、何も出来ないだろう。
今の私は私だけど、私じゃない。
こんな私を見て、夏樹はどう思うだろうか。
可哀想、と言って慰めてくれるだろうか。
それとも、憐れみの表情を浮かべ、また私の前から立ち去ってしまうだろうか。
夏樹……。
あなたは、どっち?
また、私の前から消えてしまうの―――。