愛されたがりや
―――翔子……?
翔子……?
私の名前を呼ぶ声が、また聞こえてきた。
父だろうか。
たぶん、そうだろう。
こんなふうに嫌がらせをする人物といえば、父しかいないのだから。
遠くで聞こえていた声が、次第に近づいてきた。
けれど、肝心な姿はどこにもなく、声の主は一向に現れることはなかった。
不気味な空間に響く声。
それも不安定な声音で、ただただ私の名前を呼び続けるだけ。
返事をするまで呼び続ける気なのだろうか。
不安と恐怖で、心が張り裂ける寸前だった。
胸の高鳴りは一段と激しさを増し、次第に感情が昂ぶっていく。
不安と恐怖が極限に達すると、人は怒りに変わるらしい。
私は起き上がり、そこにいるであろう父に向かって怒鳴った。
父に負けないように、と―――。