愛されたがりや
実家に戻って、5日目が経っていた。
仏間で過ごした夜はあの日だけで、あとは空いている部屋を使っていた。
足繁く実家に通う親戚や父の友人達。
でも、もう泊まっていく者はいなかった。
なので、私は悠々と空いている部屋を使うことが出来たのだ。
兄の彼女は3日目までは実家に泊まっていたのだが、月初で仕事が忙しいらしく一旦自分のマンションに帰っていった。
久し振りに4人で過ごした夜は、なんとなくぎこちなかった。
皆、いそいそとして落ち着きがない、と感じたのは私だけだろうか。
たぶん、そうなのだろう。
考えすぎかもしれないけれど、この場所で部外者といえば私だけで、私以外は皆家族なのだ。
だから、私だけ居心地が悪く感じるのは当たり前のこと。
私だけ孤立していて、誰とも話をすることも話し掛けられることもなく、ただつけっぱなしのテレビ画面を眺めているだけで、でもシーンとしている家の中にいるよりはましで、何か音があるだけで私は安心出来てしまう。
それが、たとえ面白くもない番組だとしても。
私は、ただただテレビ画面を眺める。
ただひたすら眺め続ける―――。
「翔子?あんた、初七日までいられるのよね?」
お風呂から上がってきた母が、いつものようにテレビをボーッと眺めている私に話し掛けてきた。
私は振り向きもせず、曖昧に返事をする。
「ん……。分かんないな……。仕事もあるし……」
「そう……」
母は私の返答を見越していたのか、あまり驚く様子はなかった。
「なんだよ、ねぇちゃん。フツー、身内だったら初七日に出るもんじゃねぇ?なぁ、母さん?」
いつからリビングにいたのか、弟が口を挟んだ。
相変わらずうるさいヤツだ。
「うるさい、マザコン。いちいち、アタシ達の会話に口を挟むな」
「な、なんだよ、それ〜。誰がマザコンだよ!ねぇちゃんこそ、薄情なくせに!」
と弟がむきになって言い返す。
あっ、そう……。
なんか弟とケンカするのが面倒臭くなった私は、そう言っただけでまたテレビを眺めた。
弟は後ろでまだ騒いでいる。
無視をすると更に躍起(やっき)になるからタチが悪い。
誰に似たのか……。
番組は、ちょうどドラマの時間帯で主題歌が流れていた。
ドラマの世界は、幻想的で羨ましい世界でもある。
どんなジャンルのドラマでも、ドロドロしたストーリーが最後の最後にはハッピーエンドで終わる確率が高い。
それも、短期間で。
けれど、現実はそうもいかない。
何度、この世界がドラマであってくれたなら……、と願ったものか。
それくらいドラマのように滑(なめ)らかに進んでいく物語はどこにもない。
だから、こうして私は苦しんでいる。
だから、私は辛い……。
私だけ―――。