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愛されたがりや

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告別式、出棺、火葬、そして繰り上げ法要がそつ無く執り行われ、あっという間に一日が駆け足で過ぎていった。

悲しんだと思ったら次の場面に移動し、また悲しんだと思うと、また違う場面へと移り変わる。

そんな慌ただしさの中でも、母や親戚、そして父の友人達は、その場その場の対応が出来ているらしく、涙を絶えずその要所要所で流している。

まるで役者のように、いつでも泣けますから任せて下さい!と涙を用意しているようにも思えてならない。

自己陶酔にしか見えないそれらの姿を眺めながら、私の心は更に醒めていった。

そんな醒めた姿が、他人には気丈に振る舞っているように見えるらしい。

翔子ちゃん、泣くのを我慢しなくていいのよ。

泣きたい時は、泣いたっていいんだから。

泣くのを我慢するのは、体に毒よ。

とか、お節介にもそんなことを言ってくる人もいるが、私は涙を我慢などしてはいない。

泣けないのだからどうしようもない。

無理に悲しみを我慢している訳でもないし、気丈に振る舞っている訳でもない。

未だに、私の中に悲愴感はやってこないのだから、自分ではどうしようもないのだ。

それに、女優でもないのだから、嘘泣きするにも簡単に涙など出る訳がない。

そう考えていく内に、私の中にある冷酷さが更に増殖して身体を蝕んでいくのが分かった。




作品名:愛されたがりや 作家名:ミホ