愛されたがりや
窓から空を見上げると、そこには夏空が広がっていた。
穏やかな朝だった。
けれど、それに反比例するように、私の心はスッキリとしなかった。
今にも雨が降りそうな、真っ黒な雨雲が心一面に垂れ込み憂鬱な気分だった。
そんな私に、朝陽が射(い)った。
眩しい陽射しは、まるで昨日の出来事を嘘にさせてしまうかのような錯覚を私に抱かせるのはどうしてなのだろう。
それが、自然の持つ力なのだろうか……。
昨日のことは、嘘よ。
そうよ、嘘―――。
そういくら呟いたところで、この寝不足で気だるい感じがある限り、嘘ではないことくらい分かる。
でも私は、現実逃避をしなくてはならないのだ。
だって、認めたくはないのだから……。
柔らかな陽射しを浴びながら、私は昨日の出来事を回想する。
でも、すぐにやめた。
やっと少しだけ心が落ち着いたところなのに、またそれを思い出すことによって心が乱れてしまうかもしれない。
そうなると、会社はおろかどこにも出歩きたくなくなってしまう。
もういい大人なのだから、無責任な行動だけは慎みたい。
だけど―――。