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愛されたがりや

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数時間を掛けて、私は実家のある帯広へと辿り着いた。

空を見上げると、そこにはついさっきまでいた札幌と同じ空があった。

そんな清々(すがすが)しい空の下、見慣れない街並みが広がる。

私の知っている街は、少しだけ面影を残しているも全てが変わっていた。

確実に時間(とき)は刻まれていたことに、目眩がした。

そして、何故だか分からないけれど、言い様もない淋しさが襲ってきた。

心が悲鳴を上げる。

来るんじゃなかった、と。

そう今更後悔しても遅いことなのに、その言葉は私から離れようとはしなかった。

もう来てしまったのだから、どうしようもないことなのに………。

父から逃げるように、私は帯広から出て行った。

二度と戻るものか!と誓いを立て、故郷(ふるさと)を捨てた。

私の一大決心、だったはずなのに、それなのにその誓いをいとも簡単に破らせたのは、紛れも無く父だった。

やっと掴み取った自由。

しっかり掴んでいたはずなのに、どこかで掴み損ねていたらしい。

私は一生、不自由のまま生きていくしかないのだろうか。

父からも、この街からも、自由を奪われながら生きていくしかないのだろうか――――。

いつも私の邪魔ばかりする父。

そんな父が疎ましかった。

だから、私は自由になりたかった。

それだけなのに、未だ父からの呪縛は解けないまま。

いや、もしかするとそれ以上に、その呪縛は強まっているのかもしれない。

だから、もう二度と足を踏み入れまい、と決めたこの土地(ち)に、私はいる。

来たくもなかった、この街に。

そう思ったら、虚無感やら脱力感やらが襲い掛かってきて、更に私を苦しめた。

いつまで父は、この私を苦しめ続ける気なのだろうか。





作品名:愛されたがりや 作家名:ミホ