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新撰組異聞__時代 【前編】

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 同年2月27日、浪士隊は江戸を立ち一路中山道へ。
 「勝ちゃん…」
 肩を落とす勇に、歳三は呆れた声を出す。
 「トシ、何故だ?何故なんだ?大樹公の警護だろう?私たちは」
 「そうだ」
 「だったら!何故、その大樹公がいらっしゃらないんだぁ!?」
 「仕方ねぇだろ。将軍上洛に先がけて、俺たちが先に京へ行くって事になってんだ。警護は京で、って事さ」
 「おお、そうか」
 コロッと元気になった勇は、もう笑顔になっている。
 「土方さん、京ってどんな所でしょうね」
 「さぁな。鬼とか、魑魅魍魎の巣窟って聞いたぜ」
 「面白そうですね」
 総司は、にっここり笑った。
 その鬼と、歳三たちが呼ばれるのは数年先の事になる。
 
 「岩倉卿」
 御所。帝への拝謁を終え出てくる彼に、公家の一人が声を掛けてきた。
 「これは久しぶりやな」
 「卿も、御所への参内久しぶりですやろ?御具合が悪いと聞いて、心配してましたよ。主上も岩倉はどうかと何度も、まろに御尋ねになりましてなぁ」
 「お陰で、ようなった。しかし、都も物騒やなぁ」
 「最近は不逞浪士が、うろうろしとるそうです」
 「主上の御話では、将軍の上洛を乞うたとか?攘夷を、将軍の口からはっきりと誓ってもらわなぁ。先の朝廷をないがしろにした事といい、幕府の態度は目ぇに触る」
 「まったくです」
 岩倉は、それではと軽く会釈して踵を返した。
 公家・岩倉具視___明治の中枢にその功績を残すことになる男である。
 かくして、人々の目は幕末動乱の京の都に向くことになるのである。

 --------------------------後編につづく------------------------------------