小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

悠里17歳

INDEX|15ページ/108ページ|

次のページ前のページ
 


 ギミックが出した最初で最後のアルバム『strawdoll』は兄とMMが二年生、今名前の出た千賀先生が三年生の時に作られたもので、ジャケット裏に小さく名前が書かれている。写真を見れば確かにその人だ。それは私も知っていたが、お兄ちゃんから先生の事についてはあまり話題に上がらなかったし、正直なところ信じられなかった。
 現在は学校の教師をしているということは音楽は辞めちゃってるということだ。実際に千賀先生はとても真面目そうだし、私の知るギミックの持つキャラとはおそらく対極に位置しそうな人だ。それこそMMと二人で向き合っていたら、カツアゲする不良とその被害者という構図が真っ先に思い浮かぶだろう……。
「さては、チミら。ギミックの本当の関係を知らんな?」
「当然ですよ。知った時には解散してたし」
「俺こんな風体やけど、郁さんと倉泉には逆らったこと、ないねん」
「えーっ、ホンマに?」一堂がビックリした。
「二人ともスイッチ入ったら恐いからなぁ」
 千賀先生はともかく、見た目はとっても華奢な兄にさえ逆らわないのに驚いた。
 確かにキャラで見れば先生と兄には共通点がいくつかある。ステージに上がった先生は見たことがないが、普段の様子は大人しく、普通に通勤電車に乗って会社勤めしてても違和感がない。兄も見た目が少し日本人風ではないけど、MMと先生のどちら側かとなると先生側に見える。
 とにかく、今の先生からギミックについて聞けるような雰囲気ではないのだ。
「郁さんもやるときゃ、やってくれるよ」
 MMが言うとあまり信憑性がない。軽い性格は概して得だが、こういった場面では使えない。
「ま、とにかくよ。今度の(ゲリラ)ライブの出来次第で今後のこと考えようか」
 明言していないが、ライブがMMの基準で成功すればシングルを出してみようかという計画がある。当然それがうまくいけばアルバムも視野にある。自分がプロデューサーとして腕を試すにはちょうどいい具合のバンドが私たちだということだ。 
「まぁまぁそれは先の事とゆーことで」
MMはニカッと笑うと黒い肌に白い歯が光った。
「仲間の妹だ。絶対に悪いようにはしない」
室内に私たちが下手なりに書いた曲のリフが流れるとMMのテンションは徐々に上がってきた。
「さあ練習練習」
 MMに続いて私もギターを鳴らすと音の束は再び一つとなり、私はマイクに向かって歌い出した。

作品名:悠里17歳 作家名:八馬八朔