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載小説「六連星(むつらぼし)」第21話~25話

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 連載小説「六連星(むつらぼし)」第24話
「家電量販店でのトラブル」

 「よし。とりあえず話は決まった。
 お礼と言ってはなんだが、我儘をきいてくれた礼に旨い昼飯でもご馳走する。
 そのまえに、電機屋へ寄りたいが、かまわないか?」

 金髪の英治が、伝票を手にしてたちあがる。
もう片方の手で携帯を取り出し、こいつの機種を変更したいと笑い出す。


 「携帯を変えるの?」

 「いまどきガラ携のままじゃ、使い勝手が悪い。
 流行りのスマートフォンに変更する。
 あ。言っておくが、ゲームをやりたくて変更をするわけじゃないぞ。
 ネットと効率よく連動させるために、あえて変更するんだ」


 英治が電機屋と呼んでいるのは、
市内に進出してきたばかりの、巨大家電量販店のことだ。
大通りに面した老舗の大型百貨店が不況のあおりを受けて、つい最近、
閉店をした。
その後に大規模な改装がおこなわれ、業界トップを誇る量販店が開業した。
市内の中心部で、ここから歩いても、5~6分という至近距離にある。


 先に立って歩いていく英治は、何故かがに股で、
歩くたびに、大げさに肩が左右に揺れる。
(いやだわ、こいつったら。表に出るとチンピラの習性が丸出しになる。
歩き方からして、誰が見ても不良だわ。・・・まったくぅ。
馬っ鹿丸出しだわ。英治ったら)
2歩ほど後方を歩きながら響が、密かな笑いをかみしめる。
(なんだかんだと偉そうに言ってみたところで、中身はまだまだ子供だわね、
金髪の英治くんは)


 前方の交差点が、黄色から赤に変わる。
家電量販店は反対側にある。英治が響の手を取り、横断歩道を渡り始める。
唐突に握られた手を、響は、振りほどこうとは思わなかった。
素直に、英治に引っ張られたまま、横断歩道を歩いていく。
(悪くないわね。こんな風に、突然手を握られるのも・・・)
ふふふと笑った響が、不審なものを見つけて、歩道の先にあるコンビニへ
視線を走らせる。

 駐車場に座りこんだまま、奇声をあげている2人の少年が目に入る。
よく見れば2人とも、片手にインスタント麺のカップを持っている。
通行人の視線も気にせず、2人はずるずるとカップ麺を旨そうにすすり込む。
(いまどきの子は、ああいう食事の仕方を平気でするんだ。
恥ずかしさを知らないと言うか・・・・見苦しいのは気にしないんだ。
躾(しつけ)も何も有ったもんじゃないわね。
親の顔が見てみたいもんだわね)


 横目で少年たちを見つめながら響が歩いていくと、突然、激しい
クラクションの音が、後方から響いてきた。
驚いて振り返った瞬間。コンビニの狭い駐車場を横切るようにして、
一台の車が速度も緩めず、猛然と突っ込んできた。
(危ないなぁ。人の居る駐車場を速度も落とさず、ショートカットするなんて。
なんて乱暴な運転をする車なのかしら・・・)


 コンビニ駐車場の、ショートカットを目論んだ暴走車は、
響の目の前を、ぎりぎりの距離で擦りぬけた。
さらに麺をすすっていた2人の少年たちの、すぐ脇をかすめて、
反対側の車線へ脱兎のように飛び出して行く。
立ち上がった少年たちが手にしたカップ麺の器を、立ち去る車めがけて
力いっぱい投げつける。
汁が空中に飛び散り、食いかけの麺が駐車場に四散する。


(あの子たちも最悪だな。
車の運転手もマナ―が悪いけど、あいつらの行動も最低だ。
常識ってものを知らないのかしら!。
コンビニの駐車場で、カップ麺を投げるなんて!)
許せない。ひとこと文句を言ってやろう、と響が思わず立ち止まる。
少年たちに迫っていこうとする響の手首を、英治があわてて握りしめる。


 「乗せられるんじゃない。あれは、仕組まれた八百長だ。
 猿芝居の挑発に乗るんじゃないぞ、響。
 連中はぐるになって、善意の人間をひっかけようと目論んでいるんだ。
 止めに入ったり、偉そうに小言をいう者を、ああして待ちかまえている。
 文句なんか言ってみろ。あいつらの思うつぼだ。
 逆にゆすり返してくる。
 善意を逆手にとって、金を巻き上げようと言うのがあいつらの狙いだ。
 ほら見ろ・・・・もうコンビニの店員が、箒を片手に飛んできた。
 汚れた駐車場を、手っ取り早く掃除しておしまいだ。
 今日の収穫は、これで、ゼロと言うことになる。
 お前。見かけによらず意外と単純だからなぁ。
 あんな猿芝居に、簡単に騙されるんだ。
 これを教訓に、今後は充分に気をつけろよ・・・あっはは、」


 なるほど・・・よく見れば、駐車場にカップ麺を播き散らかした
2人の少年と、掃除をしているコンビニの店員の間には、
顔見知りのような雰囲気さえ漂っている。


(当たり前のようにコンビニの店員が、駐車場を掃除しているということは、
 こういうことが、常に行われている証明なのか・・・・
 今どきの悪ガキどもときたら、まったくおって油断も隙もないわねぇ)