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私の中のこころたび

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俳優火野正平が相棒の自転車『ちゃりお』に乗り、視聴者から寄せられた思い出の場所を訪れ手紙を読む、NHKで放送されている旅番組「にっぽん縦断 こころ旅」が気に入り夫婦で毎日のように見ている。時には見覚えのある風景がでたり日本の田舎らしい場面、町で出会う人々と火野正平の会話など上手くマッチし良く彼を使ったものだと感心させられる。
番組を見ていて誰だって思い出の風景やもう一度訪れたい場所はあるだろうなと感じ、自分の中の思い出の風景、訊ねてみたい場所はと思い出を呼起こすとこれがたくさんありすぎるほど。その殆んどは若かりし頃訪れた場所なので多感な青春期に何でもしておくものだと今になって思うが、その中で『私のちゃりお』こと自転車にまつわる場所もある。
丸亀城の記事を見てそういえばあそこもこころ風景の一つだなと昔のシーンが蘇った。

 高校生の時、同級生は当時流行のスズキのGT38、ヤマハミニトレGT50、ホンダDAX ST50といったバイクを買ってもらっては乗り回し、中には中古のスバル360を買い、当然タバコの臭いが満ちていてるその車を学校に無断で通学に乗って来ては学校近くに路上駐車したままだったつわものもいた。

 今では車好きな私はその頃なぜか自転車小僧だった。世が世であればツール・ドゥ・フランスに出たいと考えているかも知れない。モーターバイクに興味がないわけではなかったが、どういう訳か生まれつき天邪鬼なのか自転車が好きでアルバイトしては二台購入した。一台は黒いフレームの新聞配達と通学用、もう一台薄いブルーメタリックのサイクリング専用で二台とも親の世話にならず自分のバイト代だけで購入したものだから大切に乗っていたものだ。50kmや80km走ることはなんとも感じない体力と脚力をもってどこへ向かうかといえば山道を行く。俺は山岳サイクリングが好きと勝手に思い込んでいた。香川県の金毘羅さんがある象頭山山頂だったり、小豆島の寒霞渓だったり国道の徳島県境だったり。馬鹿は高いところへ登りたがるというのはまんざら嘘でもないようだ。日帰りで行った小豆島への小さな旅は今は亡き友人とのこころの旅でもある。
 
 中学の同級生だった女の子が高校の同級生の女の子を紹介してくれるということで、会いに行くその場所が丸亀城内にある市立図書館だった。自宅からその場所までは当時国鉄でも少々時間が掛かる距離だが、毎日十数キロを自転車で新聞配達している私にとっては近いもの、まして今で言うサイクリング用の軽快なバイクに「女の子を紹介してもらえる」というターボが加わり意気揚々とそして颯爽と丸亀城内西側にある図書館へ向かってペダルを漕ぐ、爽やかな天気のいい日で黒い学生服を着ていても、自転車を漕いで切る風で汗もかかなかった。
 図書館が選ばれたのは彼女たちが試験勉強をするためで、当然私もその頃は考査の時だったはず。しかし一緒に勉強などするはずもなく女の子に会えるって思いだけで掛けて行く。国道を北上し、丸亀高校を過ぎて堀を渡り玄関に着いた私は息を整え図書館に入り二階へ上がると長い机を挟み同級生の女の子と向かい合った同じ紺色の制服を着た女の子が目に入る。ショートの髪を耳に掛け椅子に座って勉強している姿から
作品名:私の中のこころたび 作家名:のすひろ