雨と匂い
「ん、愛羅?」
何も言わなくなった愛羅の顔を、不意に詩織が覗き込んだ
「何、詩織・・・」
「愛羅、顔真っ赤だ」
「うるさいな、そんな見ないでよ」
「ふーん?何でそんな顔赤いの?」
「さあね」
愛羅はそっけない返事を返すけれど、顔は真っ赤なままだ
「ねー、愛羅いい匂いだからこのままでいいー?」
「好きにすれば?」
そう言って愛羅がチラッと詩織を見ると、びっくりするほど近くに詩織の顔があって、慌てて目をそらす
(背中、あったかいなあ・・・)
そんなことにすら、この愛羅の正体不明のドキドキは強くなっていく
「・・・詩織さ」
「ん?」
「詩織も、すごいいい匂いするよ」
「えっ」
「うん、こんだけ近いと分かるわー」
そう言うと詩織は黙り込んでしまった
(なんだこいつ、いきなり嗅いだり黙ったり・・・)
「雨、強いね・・・」
「うん、まだ暫くここにいるかー」
(詩織も私みたいにドキドキしてたらいいなあ)
なんてぼんやり考えながら、二人で雨を眺める
まだまだ雨は強い