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関西夫夫 クーラー5

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 俺の嫁が出張から戻って来た。晩飯は用意したとおっしゃったので、とりあえず、テレビを観て待ってたら、とんでもない晩飯やった。ガバメントバックと同じくらい大きな紙袋やった。
「なに? それ。」
「ひつまぶしやて。あー重かった。説明書とかういろうとかも入ってるらしい。堀内からの差し入れや。」
「ひつまぶし? まあ、ええわ。俺が準備するから、おまえ、シャワー浴びてきぃ。」
 俺の嫁にシャワーを命じて、紙袋の中を取り出した。そら重いやろう。出汁まで、きっちり容器に入ってるし、木でできたご大層な容器に、飯まで入ってる。あとは、ネギだの海苔だの大根オロシなんかの具材だ。電子レンジができると説明書にあるので、木の器は電子レンジにかけた。出汁のほうは、少しだけ温める。それから、でかいウイロウが二本。羊羹が一本。たぶん、堀内からの侘びと思われるので容赦なく食べることにする。


「まず一膳目は、そのまんま。二膳目は薬味載せて。三膳目が茶漬け。以上。」
「俺、三膳目からでええ。茶漬けやったら腹に入る。」
 風呂から上がった俺の嫁は、パン一で食卓についた。まあ、これだけの荷物を運んで戻ってきたので、それでもええか、と、薬味を載せて出汁もかける。しゃらしゃらと水都が茶漬けを飲み込んでいるので、それを確認して口にしたら、美味かった。ぷっくりした細切れのうなぎとタレの染み込んだごはんは、美味かった。がつがつと一膳目を完食するのに数分とかからない。
「うまぁ。なんや、これ? 」
「堀内のおっさんが、いつも行く店の味らしいで。せやから、俺らにも合うって言うてた。ウイロウも、おいしいとこのや。」
「なるほど、そういうことか。タレがめっちゃ美味いな。さすが、グルメなおっさんや。」
 今度は薬味を入れて掻き込む。これも味が変わって美味い。ワサビってウナギと相性がええらしい。俺の嫁も一膳目を食べたので、お代わりしたったら、また食ってる。
「これ、夏にはええなあ。」
「せやなあ。さすがに、うちで作るんやったら、こんなにウナギは入れられへんけどなあ。これ、焼いた鯛とかでやっても美味いんちゃうか? 」
「そこは任せる。夏バテに効くから、花月にもええって言うてた。」
「確かに、馬力つきそうや。今夜は寝かせへんで? 俺の嫁。」
「好きにしてください。俺は力尽きたら寝るから好きにしたらええ。さすがに、移動距離が長いから疲れた。」
「しばらくはないんやろ? 」
「ないんとちゃうか。たぶん。一応、オーダーされたもんはクリアーしたしな。」
「せっかくの遠征日和やったのに。」
「しゃーないやろ? おまえが忙しかったんやから。・・・明日、掃除したるから、おまえは寝とけ。」
「いや、掃除は二人でして、適当なスーパー銭湯でもいわそうや。ほんで帰りに外食したら、デートやんかいさ。」
「ほんなら、俺が起き上がれるぐらいにセーブしてくれるっちゅーことですかい? 花月さん。」
「え、えーっと、時と場合と盛り上がり方により、やな。あかんかったら日曜に行こ。」
「・・・・あのな。俺の背中、他人様には見せんほうがええんちゃうか? スーパー銭湯に家族風呂とかないやろ? 」
 それで、俺も思いだした。俺の嫁の背中は、現在、死人色で、とんでもなく気色悪い色合いになっている。まだ、とても他人様に見せられる代物ではなかった。さすがに、ご近所のスーパー銭湯には家族風呂なんていう高尚なもんはない。
「・・・そやった・・・あかんがな・・・」
「うちの風呂で我慢しぃ。さすがに、俺も、あかんと思うで? もうちょっと色が落ち着いたら、どっか行こ。」
「温泉? 泊まり? 」
「安いとこでな。・・・そういや、今回の遠征のお駄賃に、おっさんが白紙の小切手くれるらしい。あれ、先に貰っとこか? 」
「いや、それは老後に貯めよう。・・てか、白紙? 億単位で書いてもええんか? 」
「ダアホッッ、おっさんは銀行渡りでくれるから、億単位は書いても通らへん。せいぜい、百万までや。・・・まあ、三十万までは停められへんと思う。」
「何をしてたんや? おまえ。」
「仕事しかしてない。俺が、関西弁で喋ったら効果があるねんて。ちょうどええわ。夏物のスーツを二着買お。あと、ワイシャツも調達しとこうかな。花月も買え。それで、十万ぐらいは行く。」
「せやな。おまえのスーツ、二着あかんもんな。ほな、日曜は買い物に行こう。メシは外食。」
「麺類がええな。」
「あかん。ごはんを食べる。焼肉とかええやん。ホルモンたっぷりで鍋でもええな。」
「いらん。あ、冷麺食おう。それやったら付き合うわ。」
 かつがつとひつまぶしは消えていった。出汁茶漬けなので、俺の嫁でも三杯食った。これだけ食べれば、夏バテにも効くやろう。
作品名:関西夫夫 クーラー5 作家名:篠義