私の読む「枕草子」 201段ー257段
とあるのが、関係ある、と解釈している人もいる。
【二四六】
生れ変って天人などになるなら、こうもあろうかと見えるものは、普通の女房として仕える人が、高貴の方の御乳母になったそれだ。
宮仕の儀礼として着るものと決められている唐衣も着ず、裳さえも、極言すれば着けないと同然の姿で、主君のお側に添い臥し、御帳台の中を自分の居間として女房達を使い走りにして、自分の局に用事を告げに行かせたり、手紙を取り次がせなどする有様は、とても口では言いつくせそうにない。
無位で雑役に奉仕する蔵人所の雑色が、蔵人となったのは、目出度いことである。昨年の賀茂の臨時の祭に御琴を持った時は一人前とも見えなかったのに、君達と連れ立って歩きまわる姿は、一体どこの人かという気がする。同じ蔵人でも他の官からなった場合は、それ程とも感じない
【二四七】
雪が今も降り続いて高く積もってきた。
五位でも四位でも顔色がよく若々しいのが、
衣冠・束帯などの正装、服色に定めがある袍の色が大層綺麗。革の帯は石帯、袍にその跡がついている。正装の際は石帯は袍の腰をしめるが、宿直の折は下襲を脱ぎ、上の袴の代りに指貫をはく。石帯は外して袍にその跡がついているのである。裾をたくし上げて、紫の指貫も雪の白色に映えて色の濃さが増したのを着て、男子の場合は下襲と単との間に着る袙(あこめ)の色が紅か、さもなければ仰山な山吹襲(表薄朽葉、裏黄)を出袿(いだしうちぎ)にして、大形で柄がある従者が持ってさしかける傘が風が吹いて雪が横に飛ぶのを防いで少し傾けて挿して歩いてくるのに、深沓や半靴、脛巾(はばき)(脚絆)にまで雪が白くついているのが雪風景だと面白い。
【二四八】
弘徽殿の細殿の遣り戸を朝早くに開けたところ、清涼殿の西北隅にあり、主上沐浴の間である御湯殿の北方に、簀の子から続く切馬道(きりめどう)から降りてくる殿上人、着なれてしなやかになった直衣や指貫をひどいほころびの着方をしているので、色さまざまの下着がのぞいているのを、押し込むようにして、御湯殿から北の陣の方へ歩いて行くのに、開いてある戸の前を過ぎるときに、冠の後ろに垂らした纓(えい)を前にやって顔を隠して通り過ぎたのが可笑しかった。馬道は殿内の廊を切り、厚板を渡し必要に応じて上げるようにしたところ云う。
纓(えい)は冠の後に垂
らした薄絹の部分。
北の陣は内裏北方の朔平(さくへい)門。兵衛府の陣(詰所)がある。
【二四九】
岡は。
船岡。山城国愛宕郡柴野の西方。
片岡。大和国北葛城郡。
聖徳太子は日本書紀に
しなてる 片岡山に 飯(いひ)に餓(ゑ)て 臥(こや)せる その旅人(たひと)あはれ 親無しに 汝(なれ)生(な)りけめや さす竹の 君はや無き 飯に餓て 臥せる その旅人あはれ。
と詠われたと書かれてあり、万葉集には
上宮聖徳皇子(うへのみやのしやうとこのみこ)の竹原井(たかはらゐ)に出遊(いでま)せる時、龍田山に死(みまか)れる人を見(みそなは)して悲傷(かなし)みよみませる御歌一首
家にあらば妹が手纏(ま)かむ草枕旅に臥(こ)やせるこの旅人(たびと)あはれ(418)
鞆岡(ともおか)。山城国乙訓郡、笹が生い茂っていて趣がある。
神楽、採物歌(とりものうた)に「この笹はいづこの笹ぞ、舎人らが腰に下がれる鞆岡の笹」とある。
かたらひの岡。未詳。あるいは「かたこひの岡」の誤りか。
人見の岡。山城国葛野郡嵯峨野。
【二五〇】
降るものは。
雪・霰(あられ)。
霙(みぞれ)雪の一部が雨となって降るもので憎いけれども、白い雪が交じって降る、面白い。
【二五一】
雪には檜皮葺(ひはだぶき)が、とてもいい。少し雪が消える頃。また、それ程多くも降らない時に屋根を見ると、瓦の丸みが際だって黒く見えて、楽しい。
時雨・霰は板屋根に当たる音。霜も板屋根とそれに庭。
【二五二】
陽は入り日。
沈みきってしまった山が空と接して見える部分「山の端」に、光がまだ残っていて赤く見える、そこに薄く黄ばんだ雲が棚引く、何となく悲しみの気持ちになる。
月は、陰暦十六日以後は明けがたの空、東山と空とが接する山際に細い形で出る時分が大層身にしみた感じだ。
本文の中に、私が調べた、色々な方々が書かれたネットの研究資料、その他の書籍などを、本文に挿入しまして読みにくいと思いますが、あくまでこの日記は私の読書日記ですので、私が読むままに書かせてもらいます。コメントに記入していたのですが記入忘れが出てきますので、長いものは別にして、単文ですむのは本文に入れさせてもらいます。ご了承ください。
【二五四】
星は、すばる(昴)。ひこぼし(牽牛星)
。ゆふづつ(宵の明星)。よばひ星(流星)
少し面白い。尾でもないならましてどんなにいいだろう。
【二五五】
雲は白色・紫・黒もいい。風が吹くときの雨雲。
明け離れる時分の黒い雲が段々に消えて白くなって行くのも大層よい。
「朝にさる色」(朝に何々色)というが、作詩されている。漢詩に詠まれている。
「朝雲暮雨」(ちょううんぼう)
月が煌々と輝いているのにその表面に薄い雲が有るのは、哀愁がある。
【二五六】
騒がしいもの。
走り火、ぱちぱちとはね飛ぶ火。
板屋根の上で烏が朝、餌を食べている。嘴と板屋根が当たる音。鬼界の衆生に施すためにと餌を屋根などにまいておく。
十八日毎月の観音の縁日に清水寺に丁度籠もりあわせた時。
日が落ちて暗くなったときに、未だ火を点さないのに他所から人が来あわせた。それが、
遠方の田舎などから一家の主(受領)が上洛したのは実に騒がしい。
近所に火事が起ったという時。けれ類焼はしなかった。
【二五七】
相手に無礼な様,なげやりな様。
下級の女官達の髪を束ねた姿。働く時に髪を結い上げて櫛で止める。
唐絵に見える石帯の裏側。表の精巧さに比し裏には何も施してない。
高僧の行動。
作品名:私の読む「枕草子」 201段ー257段 作家名:陽高慈雨