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私の読む「枕草子」 201段ー257段

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【201】
 奥ゆかしく、深みがあるもの。
間に物があって隔てて聞くのに女房とは思えない手を打つ音がひっそりと意味ありげに聞えたと思うと、返事を若々しくして衣ずれの音をたてながら参上する気配。
物の蔭とか、または襖を隔てて聞くのに、
お食事中なのか、箸や匙などの音が混じって聞えるのは、おもしろい。つるのついた金属製の提子(ひさげ)容器が倒れるのも、耳につく。

 十分砧で打って光沢を出した衣の上にばら
ばらではなく髪がかかった具合、その長さを推測せずにいられない。
立派に設備をした部屋で、大股油は灯さず火鉢におこした炭火だけが周囲を照らしている、そこに、御几帳の紐などがつややかにちらりと見えたのは、大層すばらしい。

御簾の帽額(もこう)を総角結び(紐の結び方の一種)などで巻きあげた鈎のくっきりしたのも、鮮明に見える。鈎は御簾を巻きあげた時にかけておくかぎ形の金物。立派に調製した火鉢が、灰の際がきれいで、おこした火で内側に描いた絵などが見えたのは、大層よい。
火箸が大層くっきりとつやを帯びて斜めに
立っているのも実によい。

 夜深厚、中宮もおやすみになり、女房達も皆寝てしまってから、外の方で殿上人などが何か話をしている、その奥で碁石の箱に入れる音が何度も聞えるのも、大層心にくい。
火箸をそっと灰に突き立てるのも、まだ起きていたのだと聞くのも、みんな面白い。

 何といっても寝ない人はゆかしい。人はみんな寝てしまっているのに、ふと目を覚まして聞くと、真夜中なので起きているのだなと物を隔てて聞いていると、話すことは聞えず、男の方もひっそりと笑った、一体何を話しているのかと心がひかれることだ。

また、中宮がおいでになり、女房などが伺候しているところに、殿上人とか典侍など、気のおける人が参上した時、お側近くでお話し合いなどある間は大股油も消してあるので、長方形の囲炉裏の火の光でものの区別もはっきり見える

殿上人達にとっては心のひかれる新参の女
房で、直接お召しになる程の地位でもない人が、すこし夜更けてから参上したのに、さやさやと鳴る衣ずれの音が魅力的で、膝行して御前に伺候すると、何かほんのすこし仰せになり、初心らしく遠慮がちにお答えする声の具合が、聞えそうにもないくらい実に静かだ。

宿直の女房達がここに一群れ、かしこに一群れして話をちょっとし、退出したり参上したりする衣ずれの音など、仰山ではないが、あの人だなと聞かれる、それは実に奥ゆかしい。

宮中の局などで、気のおける人がいるので
此方の灯は消してあるのに、わきの灯の光が屏風の上などからもれてくるため、さすがにものの見分けはほんのりつく、そこに、女は丈の低い几帳を身近に寄せて、相手は昼間それ程向い合わぬ男なので恥かしくて。女は几帳のそばで物に寄りかかって横になり、ちょっとかしげている髪恰好のよしあしは隠せないようだ。

男の直衣や指貫などは几帳に引掛けてある。
それが六位の蔵人の青色であってもまあよかろう。
 緑衫(ろくそう)に限って後の方にまるめ込んで、暁にも探しあてることができず、大騒ぎさせることだろう。
(緑衫は六位が着る緑色の袍)

夏であれ冬であれ、几帳の片側に衣を引掛けて人が臥しているのを、奥の方からそっとのぞいたのも大層面白い。
香(こう)のにおいは実に奥ゆかしい。

【202】
 五月の長雨の頃、清涼殿北廂。当時中宮定子の上局だった弘徽殿の上の御局の小戸にかけた御簾に藤原斉信(ただのぶ)中将が寄りかかられたその移り香は真実けっこうなもので、香の名前は思い出せずあたりが長雨で湿っていて、何か深みのある様子が珍しいことではないが、やはりいい香りと言いたい。次の日までその移り香が御簾にしみ通っていたのを、若い女房たちがまたとない程に思ったのも、もっともなことではある。


平安時代の女性はお風呂にあまり入っていないのに髪はとても長いですが、その髪はさらさらだったのですか?

ベストアンサーに選ばれた回答

 平安時代の貴族の女性の髪は、長いだけではなく、黒くてツヤのあるしっとりとした髪が好まれました。

 平安時代のヘアケアは、まず「ゆする」と呼ばれる米のとぎ汁、あるいは糠を湯に溶いたもので髪全体を濡らし、櫛でとかします。このとき、髪を洗うための杯(ゆするつき)という入れ物を使用します。
 次に「澡豆(そうず)」と呼ばれる小豆粉を炒ったもの(たいへん芳ばしい香りがします)を髪全体につけ、湯で洗い落とすように櫛でとかします。
 洗い終えたら、髪を乾かしながら香(こう)を焚いて、髪に香りを移します。

 平安時代の髪の乾かし方について『宇津保物語』に

「すまし果てて、高き御厨子の上に御褥敷きて干し給ふ。(中略)宮の御前には御火桶据ゑて、火起こして、薫物どもくべて薫(た)き匂はし、御髪あぶり、拭ひ集まりて仕うまつる。」

 とあります。「すましはてて」つまり洗髪が終わった宮は、褥(しとね)が敷かれている背の高い厨子(ずし)の上に座り、あるいは身を横たえて髪を乾かします。
 宮の御前には火桶が置かれ、その熱で髪をあぶったり拭いたりする女房たちが仕えています。そして薫物がたかれ、その香りを髪に移すということが行われました。

 また『源氏物語』「若菜」下巻にも

「女君(紫の上)は、暑くむつかしとて、御髪澄まして、すこしさはやかにもてなしたまへり。臥しながらうちやりたまへりしかば、とみにも乾かねど、つゆばかりうちふくみ、まよふ筋もなくて、いときよらにゆらゆらとして(下略)」

 と描写されています。
 こうして洗い上げた髪は、糠には油脂分が含まれていますので、現代のサラサラとは違って、かなりしっとりとしたツヤやかな感じに仕上がります。

 整髪料としては「髪油(かみあぶら)」と呼ばれるツヤと栄養を与える植物性のものが用いられます。サネカズラの茎を細かく刻み、その粘液に水を加えて用いました。

 ちなみに、洗髪の頻度は1ヶ月に一度という説から1年に一度程度という説まで諸説があって、はっきりしていません。

平安時代の女性の長い髪の処置について、ネットに興味ある記述がありましたので、転載させていただきました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10243



【二〇三】
 格別堂々としてもいない男が、身分の高い
人低い人大勢連れ立って列を作って行くよりも、乗り慣れたつややかな車に牛飼い童の服装をこざっぱりと着せて、牛が早足で牛飼い童を引くようにして綱に引かれて進行する。
すっきりした男で、裾が濃いめの袴、または二藍か何かで、髪形はどんなであれ、掻練や山吹襲を着たのが、頭は所調もとどりを放ち烏帽子をつけない。そうして、大層光沢のある沓をはいて、堂のあたりを走って行くのは、かえって心がひかれて見える。

【二〇四】
 島というのは大小の八十島。
浮島。陸前国塩釜の浦にある。
平安時代に歌枕として詠まれた「浮島」の地である。陸に浮か
ぶ島のように見えたことから浮
島と言われ、この辺の現在の地
名も浮島となっている。