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関西夫夫 クーラー2

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翌日、堀内のほうにも連絡が入った。嘉藤は、本日中に退院できるのだが、浪速のほうは、様子見に二、三日の入院やと、東川が報告してきた。
「みっちゃんが、恨み買うってか? それ、どう考えても、わしのほうとちゃうか? 東川。」
 浪速個人ではなく、その愛人関係にあると言われている堀内の恨みなら数え上げるのも面倒なほどある。だが、ここんところは、関西で暴れてない。東海には、そら殺したいと思われてる連中は、山ほどいるが。
「関西まで遠征して愛人を傷物にするほどの恨みを買ってますか? 堀内はん。」
「さてなあ。そう言われても・・・せやけど、みっちゃん個人に、そんなことしたいヤツはおらんやろ? 」
「わしも佐味田も、そこは同意見です。もしかしたら、ただの半端もんの悪戯かもしれへんとは言うてますんやが。」
「ほんで、業務のほうはいけるんか? 」
「一週間や十日やったら、わしと佐味田で回しますんで大丈夫ですわ。そんなわけで、今回の定例会議は休ませてもらいますで? 」
「おう、報告書だけ送ったれや。わしが代理で報告しとく。」
 近々、月に一度の定例会議があるのだが、さすがに、浪速と嘉藤が不在となると、東川も出張は難しい。やれやれ、と、堀内は連絡を終えて、一応、沢野にも報告しとくか、と、常務の部屋に顔を出した。

「みっちゃんを轢き逃げ? また、おとろしいことを。・・・おまえ、何をやらかしたんじゃ。」
 もちろん、沢野の意見も、こういうことになる。浪速が個人的な恨みを買うことはないのは理解している。
「あんたが東海から動かへんのに、わしだけで関西で暴れてるなんて、あらへんやろ? たぶん、ドアホの悪戯じゃ。」
「わざわざ、あんなヒョロヒョロのウラナリをかえ? とんだ、どあほやな。・・・いや、嘉藤と一緒やったんやろ? それで悪戯できるか? 嘉藤やで? 」
 嘉藤も、強面ではある。後姿やとしても堅気には見えないのに、そんなヤツのツレに悪戯を仕掛けるか? と、沢野は首を傾げる。浪速一人なら、さもありなんやが、ツレがおって、それはない。
「ほな、あんたかわしの関係やが? 」
「わし、今、東海のチェックで忙しい。関西まで戻って悪さしてへんで? おまえや。」
「あのな、ドサ周りかっちゅーくらいに東海を、あっちこっちと動いてて、関西まで手が廻るわけがないやろ? わしも違う。」
 二人して、東海の支社を手当たり次第にチェックしている。さすがに、この状態で、関西までは戻れないのは、どちらも同様だ。
「佐味田が調べとんのやろ? わかったら、こっちにも回してや。それからでええわ。」
「せやな。」
 昨今は、道路にも監視装置がある。どこかで、そのクルマが引っ掛かることが多い。警察からの情報がないと、こちらも動けない。すぐにわかるやろうと思っていたら、当てが外れた。残念ながら、防犯システムには引っ掛からなかったのだ。本通りではない場所て、オフィス街ともなると、防犯カメラ自体がなかったからだ。Nシステムは、大きな通りにしかないから、そこまでに何かあっても調べられない。まだ九時となると、大通りなら車両は多い。一々、チェックするわけにはいかない。



 二、三日と言われた入院は、翌日には一週間になってた。なんでやねん、と、言いたいとこやが、なんか痛み止めとか飲まされてるせいか、頭がはっきりせぇーへん。嘉藤のおっさんが、勝手に手続きもしてくれたんで、俺のほうは、寝てるだけの状態や。それも、朝から検査検査で連れ回されて、ぐったりした。夜に花月が、着替えを届けてくれた時も寝てた。
「大丈夫か? 」
「・・あ・・・おはよーさん・・・」
「はい、おはよーさん。着替えるか? 」
「もうええわ。そこら、置いといて。・・・なんかな、入院が延びてん。一週間とか言われた。」
「はい? 打撲で一週間? 」
「・・・ようわからん。」
「後で、嘉藤さんに電話で聞いとくわ。・・・ちゃんとごはん食べたんか? 」
「え? メシ? さあ。」
「おい。」
「なんか、ずーっと寝てるんよ。ほんで、朝から検査やなんやと連れ回されてな。疲れたんや。」
 確かに、俺の嫁は、ぐったりしている。残念ながら、俺は公けには、ただの同居人なので、病状とかを説明してもらえへん。たぶん、嘉藤のおっさんが聞いてるやろうから、後から確認するか、と、内心で予定する。
「ここ、どこなん? 」
「おまえの会社の近くや。」
「それって、おまえ、遠いがな。」
「いや、乗り換えがあるだけで、大して遠おない。明日、なんか食いたいもんがあったら持ってくるで? 」
「ない。」
「果物は? 」
「いらん。もうええわ。早よ、帰り、花月。」
「まだ面会時間やから大丈夫や。」
「ちゃうがな、疲れるやんけ。もう来んでええからな。・・・あ、金だけ置いていって。」
「そこの袋に入れてある。財布は? 」
「どっかにあるやろ。もしくは、嘉藤のおっさんが持ってるはずや。携帯も・・・あれ? 」
 確か、電話したはずやのに、携帯がない。ベッドの横の机の引き出しを、俺の旦那が開けたら、携帯はあったが、財布はない。そう思ってたら、東川が見舞いに現れた。もちろん、俺の財布も持ってた。
「災難やったな? みっちゃん。バクダン小僧も元気そうやな? 」
 花月の愛称は、「バクダン小僧」。花月にとっては、黒歴史であり、恥ずかしい青春の一ページのことや。ということで、俺の旦那は、東川の挨拶に、そっぽ向いた。
「加減は? 」
「足と背中は痛いねんけど、痛み止めでマシや。いきなり、休んですんません。」
「これは、しゃーないやろ。仕事のほうは、なんとかなるさかい、大人しゅう養生しいや? 」
「けど、東川さん、出張あったやろ? 」
「あれはキャンセルさせてもろた。専務が代行してくれる。・・・てか、ひどいなあ。おまえ、満身創痍やないか。」
「見た目だけや。擦り傷が、あっちこっちあってな。」
「なんか欲しいもんは? 」
「別にない。東川さんも早よ、帰って。せや、これも連れて帰って。もう、俺は寝る。」
 ベッドの傍で椅子に座っている俺の旦那も、引き摺りだして貰う事にした。そうせんと、ギリギリまで帰らへんからや。



 無理矢理に、追い出されて東川と病院を出た。寂しがりのくせに、ああいうとこは強情や。並んで、駅までの道を歩いていた。
「うちのほうで調べたんやが、犯人は、まだ確定されてない。・・・もしかして、ただの半端モンの悪戯かもしれへん。」
「さよか。なんで、水都は一週間も入院なんや? 」
「嘉藤が、頭を打ったと思うて、説明して引き延ばした。三日して、なんも出やへんだら、退院できるとは思うがな。・・・・用心させてもろた。まだ、詳しいとこがわからんのや。もう一人の被害者の供述がとれてないから、犯人の特定が始まってない。」
「重傷ってことか? 」
「いや、命に別状はないんやが、大腿部の骨折で手術したもんやから、まだ寝てるんやと。」
「なんか解ったら、報せてや。俺の携帯言うとこか? 」
「知ってるで、わしら。おまえが嫌がるから電話せぇーへんだけ。みっちゃんから、緊急用に聞いてある。おまえしかおらんからな。」
「でも、俺が知らんがな。」
作品名:関西夫夫 クーラー2 作家名:篠義