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私の読む「枕草子」 157段ー200段

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 八月九月に入って雨とともに吹く風は哀れである。雨脚が横様に降っているのに、夏中通して着た綿入(夜具)の汗の香がしたのを
練らない絹で製した単を重ねて着るのもおかしなものである。この生絹さえ実にわずらわしく暑苦しく、とり捨てたい位だったのに、なんとなく着てしまっているのがおかしい。暁に格子・妻戸を開けてみると、嵐の風がさっと顔に吹いてくるのが本当に季節を感じる。

【一九九】
 九月の晦、十月の一日の頃、空が曇り風がなんとなく騒がしく黄色になった木の葉が、ほろほろと落ちてくる、寂しい感じである。
桜の葉、椋の葉はいち早く落葉する。
十月に木立の多い庭は本当に錦を敷き詰めたかと思われて目出度い。

【二〇〇】
 野分けの嵐が吹いた翌日こそ、大変に哀れでもあり風情もある。立て蔀や、透かし垣が風で乱れ庭の植込の類が大層痛々しい。
大きな木々も倒れ枝など吹き折られたのが
萩や女郎花の上に倒れ臥している、思いも掛けないことである。枝などは吹き折られて、萩や女郎花の上に横倒しに寝ころんでいる。本当に思っても見なかったことである。

格子の升目一つ一つに、木の葉を、わざわざそうしたかの、ように、こまごまと吹き込んであるのは、荒かった風のしわざとは思われないことだ。

光沢が薄れて紫または紅の濃い表面の色が白っぽくなった、秋に用いる黄朽ち葉の織物、薄物の小袿を着て、実直らしくて綺麗な人が、夜に風が騒がしくて寝られなくて、今朝はおそくまで寝て起きて、母屋から少し膝行して。髪は風に吹き舞わされて乱れてふくらんで肩に掛かっているのが何ともいえない。

しんみりした様子で外を眺めて、
吹くからに秋の草木のしをるれば
   むべ山風を嵐といふらむ
(吹くとたちまち秋の草木がしおれてしまうものだから、なるほどそれで山風を嵐というのだろう)(古今集249)
と詠った。

 心がけのある女だと見ると十七八ぐらい、小さくはないけれど、殊更大人とは見えない少女が、生絹(すずし)の単衣を何となく崩れた「ほころび」に着て、藍色の薄いはなだ色(はな色)もあせて濡れなどした上に、薄紅色(または薄紫色)の宿直着を着て、髪は
つややかで、こまやかにきちんと整い(緑の黒髪の類)、髪の先の方は尾花のようになって身の丈ばかりの長さであるので衣の裾の方に毛先は隠れて袴の隙間隙間から見えている。童女や若い女房達が、根ごと吹き折られた植木を、あちらこちらに集めて縦置きするのを、うらやましそうに、簾を外に押し張って、簾に寄り添っている後姿もよい。