High voltage 〜第二話〜
えっ?という顔を鉄郎はした。
「君なんかいらねぇよ、コータでいいぜ!なんなもどかしくってよぉ」
鴻大は首を抑えながら言った。
「そうだなぁ…。そう言われてみれば僕と君は友達だしね。コータってさぁ」
「なんだ?」
「どこから引っ越して来たんだい?君は転校生だろ?」
すると、鴻大はちょっと嫌な顔をして言った
「まぁ、遠い所だ……。」
「そっかぁ…じゃあどうして引っ越して来たの?」
と鉄郎は尋ねると、一瞬だけだが、鴻大の顔はさっきまでの柔らかな顔とは正反対の冷たい顔になった。
「まぁ……それも、いろいろあったんだよ。」
鴻大と鉄郎の会話が少しの間止まった。
先に口を開いたのは、鴻大だった。
「俺の話はいいからよぉ、おめえの話も聞かせてくれよ、アネキはいんのかとか、彼
女はいんのかとか、あっ!そうだ、なんでおめぇみてぇな奴がこんな不良高校に?」
「僕…なにをさせてもダメんなんだ…。運動も出来ないし、勉強もできない、親から
も呆れられてて…この高校しか入れなかったんだ……。」
「なんじゃあそりゃあ!おめえもっと自分に自信もてよ!そんなんだからなぁあいつ
らみてぇなクズ野郎にカモられ」
鴻大は最後まで言いかけた瞬間、ドッと誰かにぶつかった。
「おっ、悪りぃ。余所見してた大丈夫か?」
鴻大は顔を見上げた。するとギロっと睨まれた。ぶつかった相手は185センチはあるかというほどの高い身長と切れ目の細い目、ほんのり赤みがかったオールバックの髪、鴻大は直感したこいつ他のやつとは違う。するとオールバックの男は言った
「気にするな、次は前見て歩けよ。」
「お、おう。」
鴻大はその隣にいる男にも気が付いた。ハリネズミのように爆発した髪、掘りの深い顔、キリッとした眉毛、鴻大よりも背は低いが、なにか大きく見えた。この男にもオールバックと同じような雰囲気があった。
鴻大ぼーっとしていると二人は去って行った。
「よかったね…!喧嘩にならなくて…!」
「ん?…あ、ああ…」
「怖かったぁ…彼らは僕と同じクラスなんだけど、ほんと怖くって…。」
「あいつらの名前は?」
「え?あぁ、あのオールバックの背の高い人が鬼堂光希(きどうこうき)で、背の低い人
が難辺稑(なんべりく)だよ。確か。」
「へぇ〜……。」
またあいつらとは、なにかで合うような気がすると鴻大は思った。
「それじゃあ!僕のクラスこっちだから!」
「おう!また後でな。」
と、鴻大は言いながら1-2に入って行った。すると、クラスの生徒達がザワザワと騒ぎ始めた。まさか!昨日の事件がもう広まったのか!と思っていたら、一人の男が近づいて来た。
「お前、昨日先輩三人を殴り飛ばしたんだってな!」
と、男は言った。さっきの鬼堂光希と同じくらいの身長、褐色の肌、かなり太い学生ズボン、前から見ると剣山のように釣り立った髪の毛、横から見るとまるで、歯ブラシのようである。
「もう広まっちまったのかよ……。」
と、鴻大はボソッと言うと、心の中でこれからどうする?なんて言う?もう終わりだ!この三文字が頭の中で何度も何度も何度もグルグルと回り続けた。鴻大が半分放心状態になっていると、その男は言った。
「やるじゃあねぇか!!始めは赤い頭して見さかけだけのへっぽこ野郎だと思ってた
たら、あの腐れ二年どもを三人もやっちまうなんてよぉ!!なんとも根性のある奴だ
ぜ!気に入った!」
ん??と鴻大が聞き直すと、
「だからなぁ!気に入ったって言ってんだよぉ!」
その男が言った。やっと鴻大は状況を理解した。昨日事件がなんだか知らんがいい方向に転がったぞ!結果オーライ万々歳だ!と鴻大は心の中でパレード状態であった。
「おい?聞いてんのか?」
「お、おう。」
「俺の名前は神納煬太(かのうようた)、お前は……えっと確かコータだっけ?よろしくな!」
しゃがれた声の煬太は言った。
「俺こそよろしくな!」
この後鴻大はクラスの不良達から、昨日事件を根掘り葉掘り聞かれ、お祭り状態になったのは、言うまでもない。
この日鴻大は二人の友達が出来た上、やっとこさクラスのみんなに溶け込んでいったのであった。鴻大は寝るまでニヤニヤを止めることが出来なかった。
作品名:High voltage 〜第二話〜 作家名:石井俊