High voltage 〜第二話〜
午前7時30分 Y県S市は5月の涼しい風と暖かい日差しに挟まれ、少しずつ目覚めていく。通勤ラッシュの駅や、街に響く沢山の車のエンジン音、海には漁船がぽつぽつと見え始め、大都会としての姿をまるでアサガオが蕾を開くように見せ始める。鴻大はそんな巨大な生き物のような都市の中を学校を目指し歩いていた。
「くぁあっあ〜……寝みぃ」
大きなあくびをしながら、襟足だけ伸ばした赤い坊主頭をポリポリとかいた。昨日殴られた傷は跡形もなく消え去り、後悔の念だけが心の中を支配していた。くそッ。と呟いて再び頭をかいた。昨日、鴻大は同じ学校の生徒を三人も殴り飛ばした。しかもあろうことか先輩である。転校二日目で問題を起こしてしまった。鴻大の考えていた。楽しいハイスクールライフ計画は、もう既に跡形もなく消え去ったのである。やはり俺には喧嘩しかねぇのかなぁと、諦めさえ感じていた。鴻大は周りを見回すと、辺りには男子高校生、女子高生、いろんな制服を着た生徒が学校へ登校するという。共通の目的を持って通学している。だがしかし、鴻大のようにひとりぼっちで歩いているのは、鴻大も合わせて数十人しかいない。ほとんどの高校生が友達と一緒に通学し、友達と一緒に自転車をこいでいる。
「こんなはずじゃなかったのになぁ……」
と人目はばからず大きめな独り言をボソっと呟くと、同じ道を歩く通学中の学生達が鴻大を見ながらコソコソと影口をいった。
明誠高校は少し丘の上がった所に立ってある。その丘の道を歩く途中大きな公園の脇を通るのだが、ここは言わずとしれたS市の有名な観光スポットである。大きな池や、小高い山、小さい子供用の遊具、ジョギングロード、ゲートボール場、春は桜が満開になり、夏は夏祭りで沢山の屋台が顔を連ねる。秋は紅葉一杯になり。冬は純白一面になり、子供が作ったであろう雪だるまが、冷たい風に顔をしかめている。この場所は老若男女、季節選ばず色んな人が集まる。この公園の名は、シンプルに丘の下公園。
今日も朝っぱらだというのに丘の下公園には、いろいろな人が集まっていた。小さい子供が学校を目指しながらきゃっきゃっと歩き、ヤンキー達が学校だりーなとたむろしてタバコをふかし、綺麗な女の人がダイエットのためにジョギングをし、体力作りのために老人が散歩をしている。その公園の脇を鴻大はブラブラと学校を目指し歩いていた。ふと公園の方を見ると、公衆便所の周りに明誠高校の学生服を着た生徒がたむろっていた。目を凝らしてよく見ると、四五人が一人の生徒を囲っていた。
「おーなんだなんだー弱い者いじめかぁ?」
と鴻大は言うと、いかんなぁとかダメだなぁとかブツブツ言いながら公衆便所へと歩いて行った。
「おいおいおい金が無いだってぇ?あぁ?今日持ってくる約束だっだろう?約束はやぶちゃぁいけないんだぜぇ?俺らは友達だろう?鉄郎ちゃんよぉ?」
と、不良の一人が言った。
「親がジュース代だって言ってもお金をくれなくて……。」
と、 鉄郎という名のどっかでみたことあるような、丸メガネの背の低い生徒は言った。
「だからなぁ?鉄ちゃんよぉ〜俺らも昨日パチンコで使って金がねぇんだよ〜困ってんの。ね。だからさぁ銀行からでも金おろしてこいよぉ」
さっきとは違う不良が言った。
「でも……学校始まるし……。」
鉄郎が言うと
「てめぇさっきから優しくしてりゃあ図に乗りやがって!また殴られてぇのか?!弱え奴はおとなしく強え奴に従ってりゃあいんだよ!!」
と一人の不良が鉄郎の胸ぐらを掴み拳を握りしめた。
「だっせぇなぁ〜大の高校生が寄ってたかって弱い者いじめとはぁよぉ?」
そう言って鴻大はボンタンに手を突っ込みながら歩いてきた。
「なんだぁ?てめぇは!!」
「てめぇも殴られてぇか?!」
と胸ぐらを掴んだ不良とその横にいた不良が叫んだ。通学している生徒や、通勤中のサラリーマン、犬の散歩中の老人など周りにいた大勢の人達がそちらの方を向いて一斉に振り向いた。
「弱え奴とかなんとか言ってたが、もっと詳しく言ってくんねぇかなぁ?諸君。」
と鴻大は言うと、五人の不良のうち背の高い男が鴻大の方をギロリと睨み
「強者は絶対なんだぜ、この世界はよ。弱者は強者に踏みにじられて生きていく定め なのさ、そう弱肉強食なんだよぉ」
と言った。すると鴻大はポケットから手を出し、背の高い男を指差して言った。
「本当のクズってぇ言うのは、弱者を虐げ、弱者を私利私欲の為に使うことだ!てめ
えが強え奴だって?違うね。てめぇはその弱者よりも弱えクズ野郎だぜ!」
「弱者を自分のために使って何が悪い!!」
と背の高い男が鴻大の顔面を殴った。
ドッ!
背の高い男のストレートは完璧に鴻大の顔面に入った。が、しかし鴻大はニヤッと笑うと、
「昨日ので体は温まってんだよ。てめぇのヤワな拳は俺には効かねえ」
「なにっ??!!」
「一回は一回だ……。」
背の高い男が鴻大の瞳を覗くとさっきまでのフワフワした瞳とは違い、鋭利な刃物のような輝きを持った瞳に、目を離すことが出来なかった。すると、
ズドォッッ!!!
と他の四人の不良が瞬きもしないうちに二、三メートル離れた桜の木まで背の高い男が吹っ飛んだ。
グハァっ
背の高い男は気絶していた。
「て、てめぇ、ば、、化け物か!!」
不良の一人が叫ぶ。すると鴻大は鉄郎の頭を掴むと
「こいつにもう一度なんかしてみろ、おめぇら全員ぶっ殺す!!分かったなぁ?!」
「は……はい!」
と四人が声をそろえて言った。
「聞こえねぇ!!」
「はい!!!!!」
四人の不良は背の高い男を担ぎながら丘の上の学校へと向かって走り去った。」
「まったくまたやってしまった!」
と、鴻大は膝から崩れ落ちた。するとビビりながら鉄郎が
「た、助けてくれてありがとう。僕の名前は黄戸鉄郎(きどてつろう)。君の名前は?」
手を差し伸べながら言った。
「俺の名前は昇坂鴻大だ」
と鉄郎の手を掴み、立ち上がりながら鴻大は言った。
「コータ君だね。よろしく!君のおかげだよ!この恩は一生忘れないよ!なにか礼を
させてくれないかい?」
と、鉄郎は目を輝かせながら言った。すると鴻大はニヤァッと笑みを浮かべると
「なら!俺の友達第一号になってくれよ!」
鉄郎が ? という顔をすると、いきなり笑い始めた。
「なんか可笑しいこと言ったかぁ?俺?」
鴻大も ? という顔をした。
「いやぁだって、礼をさせてくれって言ったら、友達になってくれって!ハハ!そん
な人君ぐらいだよ!」
そう言って鉄郎はまた笑い出した。
「当たり前だよ!!」
と、鉄郎が言うと
鴻大もワハハハハと笑い始めた。
黄戸鉄郎。鴻大の記念すべき最初の友達である。
鴻大と鉄郎は一、ニ年棟の二階の廊下を歩いていた。相変わらず騒がしい。さすが天下の不良高校である。
「コータ君は何クラスだっけ?」
「俺ぁ1-2だ。おめぇは?」
「僕は1-6だよ。なぁコータ君はど、」
鴻大はおいおいと言いながら鉄郎の話しを遮ると、
「さっきから、コータ君ってなんだよ!」
「くぁあっあ〜……寝みぃ」
大きなあくびをしながら、襟足だけ伸ばした赤い坊主頭をポリポリとかいた。昨日殴られた傷は跡形もなく消え去り、後悔の念だけが心の中を支配していた。くそッ。と呟いて再び頭をかいた。昨日、鴻大は同じ学校の生徒を三人も殴り飛ばした。しかもあろうことか先輩である。転校二日目で問題を起こしてしまった。鴻大の考えていた。楽しいハイスクールライフ計画は、もう既に跡形もなく消え去ったのである。やはり俺には喧嘩しかねぇのかなぁと、諦めさえ感じていた。鴻大は周りを見回すと、辺りには男子高校生、女子高生、いろんな制服を着た生徒が学校へ登校するという。共通の目的を持って通学している。だがしかし、鴻大のようにひとりぼっちで歩いているのは、鴻大も合わせて数十人しかいない。ほとんどの高校生が友達と一緒に通学し、友達と一緒に自転車をこいでいる。
「こんなはずじゃなかったのになぁ……」
と人目はばからず大きめな独り言をボソっと呟くと、同じ道を歩く通学中の学生達が鴻大を見ながらコソコソと影口をいった。
明誠高校は少し丘の上がった所に立ってある。その丘の道を歩く途中大きな公園の脇を通るのだが、ここは言わずとしれたS市の有名な観光スポットである。大きな池や、小高い山、小さい子供用の遊具、ジョギングロード、ゲートボール場、春は桜が満開になり、夏は夏祭りで沢山の屋台が顔を連ねる。秋は紅葉一杯になり。冬は純白一面になり、子供が作ったであろう雪だるまが、冷たい風に顔をしかめている。この場所は老若男女、季節選ばず色んな人が集まる。この公園の名は、シンプルに丘の下公園。
今日も朝っぱらだというのに丘の下公園には、いろいろな人が集まっていた。小さい子供が学校を目指しながらきゃっきゃっと歩き、ヤンキー達が学校だりーなとたむろしてタバコをふかし、綺麗な女の人がダイエットのためにジョギングをし、体力作りのために老人が散歩をしている。その公園の脇を鴻大はブラブラと学校を目指し歩いていた。ふと公園の方を見ると、公衆便所の周りに明誠高校の学生服を着た生徒がたむろっていた。目を凝らしてよく見ると、四五人が一人の生徒を囲っていた。
「おーなんだなんだー弱い者いじめかぁ?」
と鴻大は言うと、いかんなぁとかダメだなぁとかブツブツ言いながら公衆便所へと歩いて行った。
「おいおいおい金が無いだってぇ?あぁ?今日持ってくる約束だっだろう?約束はやぶちゃぁいけないんだぜぇ?俺らは友達だろう?鉄郎ちゃんよぉ?」
と、不良の一人が言った。
「親がジュース代だって言ってもお金をくれなくて……。」
と、 鉄郎という名のどっかでみたことあるような、丸メガネの背の低い生徒は言った。
「だからなぁ?鉄ちゃんよぉ〜俺らも昨日パチンコで使って金がねぇんだよ〜困ってんの。ね。だからさぁ銀行からでも金おろしてこいよぉ」
さっきとは違う不良が言った。
「でも……学校始まるし……。」
鉄郎が言うと
「てめぇさっきから優しくしてりゃあ図に乗りやがって!また殴られてぇのか?!弱え奴はおとなしく強え奴に従ってりゃあいんだよ!!」
と一人の不良が鉄郎の胸ぐらを掴み拳を握りしめた。
「だっせぇなぁ〜大の高校生が寄ってたかって弱い者いじめとはぁよぉ?」
そう言って鴻大はボンタンに手を突っ込みながら歩いてきた。
「なんだぁ?てめぇは!!」
「てめぇも殴られてぇか?!」
と胸ぐらを掴んだ不良とその横にいた不良が叫んだ。通学している生徒や、通勤中のサラリーマン、犬の散歩中の老人など周りにいた大勢の人達がそちらの方を向いて一斉に振り向いた。
「弱え奴とかなんとか言ってたが、もっと詳しく言ってくんねぇかなぁ?諸君。」
と鴻大は言うと、五人の不良のうち背の高い男が鴻大の方をギロリと睨み
「強者は絶対なんだぜ、この世界はよ。弱者は強者に踏みにじられて生きていく定め なのさ、そう弱肉強食なんだよぉ」
と言った。すると鴻大はポケットから手を出し、背の高い男を指差して言った。
「本当のクズってぇ言うのは、弱者を虐げ、弱者を私利私欲の為に使うことだ!てめ
えが強え奴だって?違うね。てめぇはその弱者よりも弱えクズ野郎だぜ!」
「弱者を自分のために使って何が悪い!!」
と背の高い男が鴻大の顔面を殴った。
ドッ!
背の高い男のストレートは完璧に鴻大の顔面に入った。が、しかし鴻大はニヤッと笑うと、
「昨日ので体は温まってんだよ。てめぇのヤワな拳は俺には効かねえ」
「なにっ??!!」
「一回は一回だ……。」
背の高い男が鴻大の瞳を覗くとさっきまでのフワフワした瞳とは違い、鋭利な刃物のような輝きを持った瞳に、目を離すことが出来なかった。すると、
ズドォッッ!!!
と他の四人の不良が瞬きもしないうちに二、三メートル離れた桜の木まで背の高い男が吹っ飛んだ。
グハァっ
背の高い男は気絶していた。
「て、てめぇ、ば、、化け物か!!」
不良の一人が叫ぶ。すると鴻大は鉄郎の頭を掴むと
「こいつにもう一度なんかしてみろ、おめぇら全員ぶっ殺す!!分かったなぁ?!」
「は……はい!」
と四人が声をそろえて言った。
「聞こえねぇ!!」
「はい!!!!!」
四人の不良は背の高い男を担ぎながら丘の上の学校へと向かって走り去った。」
「まったくまたやってしまった!」
と、鴻大は膝から崩れ落ちた。するとビビりながら鉄郎が
「た、助けてくれてありがとう。僕の名前は黄戸鉄郎(きどてつろう)。君の名前は?」
手を差し伸べながら言った。
「俺の名前は昇坂鴻大だ」
と鉄郎の手を掴み、立ち上がりながら鴻大は言った。
「コータ君だね。よろしく!君のおかげだよ!この恩は一生忘れないよ!なにか礼を
させてくれないかい?」
と、鉄郎は目を輝かせながら言った。すると鴻大はニヤァッと笑みを浮かべると
「なら!俺の友達第一号になってくれよ!」
鉄郎が ? という顔をすると、いきなり笑い始めた。
「なんか可笑しいこと言ったかぁ?俺?」
鴻大も ? という顔をした。
「いやぁだって、礼をさせてくれって言ったら、友達になってくれって!ハハ!そん
な人君ぐらいだよ!」
そう言って鉄郎はまた笑い出した。
「当たり前だよ!!」
と、鉄郎が言うと
鴻大もワハハハハと笑い始めた。
黄戸鉄郎。鴻大の記念すべき最初の友達である。
鴻大と鉄郎は一、ニ年棟の二階の廊下を歩いていた。相変わらず騒がしい。さすが天下の不良高校である。
「コータ君は何クラスだっけ?」
「俺ぁ1-2だ。おめぇは?」
「僕は1-6だよ。なぁコータ君はど、」
鴻大はおいおいと言いながら鉄郎の話しを遮ると、
「さっきから、コータ君ってなんだよ!」
作品名:High voltage 〜第二話〜 作家名:石井俊