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私の読む「枕草子」 86段ー92段

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蔵人処に属して雑な仕事に奉仕する者、殿上人でないただの人の子供などでも貴人方の侍として、四位や五位の官職をもつ人の下にいて、何ということもないのに、蔵人になれば言葉に表せないほど見事だ。主上の御意を記した宣旨(せんじ)を持参したり、大饗の折りに主上から大臣家に賜れる甘栗の使いに参る。六位蔵入の役である。大臣家は蔵人をもてなし大事になさる様は、いったいどこから天降った人かと思われる

 娘が后にあがっておられ、またはまだ入内前で姫君など申しあげる時に、主上のお手紙の使としてその邸に参向すると、お文を頂戴するのを始めとして褥を差し出す女房の袖口のりっぱさなど、始終見ていた人とも思われず別人のような待遇ぶりだ。
 
下襲の裙を長く引きずって、衛府を兼ねた蔵入はもう少し立派に見える。邸の主人(姫君の父)がみずから杯を手にして差し出すと
蔵人自身もどんな気がすることか。
大層謹んで一歩下にいた大臣家の子弟方に対しても気持だけは遠慮し畏まっているが、
蔵人を身分同等に扱って共に歩き回る。主上が側近にお使いになるのを見るときは、しゃくにさわる程に思われることだ。御文書かかれようとすると硯の墨をすり、御団扇でおあおぎ申し。側近に奉仕する三四年の間、身なり悪く並々の服色で仕えているのはかいもないものだ。


飾太刀(かざたち)とは、平安時代頃よりそれまでの「唐大刀」「唐様大刀」に替わって用いられるようになった、儀礼用の刀剣である。 「飾剣」とも表記される

大饗
二宮大饗と大臣大饗とあり、前者は中宮・春宮で正月二日親王・公卿以下を饗応し、後者は大臣任官の際大納言以下太政官官吏を饗応する。

十一月中の丑の日、主上常寧殿に出御、御帳台で五節の舞の試楽を御覧になる。「帳台の試」の夜、五節を仕切る蔵人の奉行が厳しく言って、舞姫の世話をする女房。かしづき二人、そして主役の童、このほかの何人も許さないと言って戸を押さえて、面憎いほどに言うので殿上人なども、「私一人だけでも」
と言うのを、
「恨みっこが生じまして、とてもできません」
などと堅いことを言って頑張っているのに中宮の女房二十人ばかりが、蔵人何様よ、と戸を押し開けてざわめきながらはいるので、あきれてしまって、
「実にこれは、むたいなことですな」
と、立場を失って突っ立っているのが可笑しい。女房について舞姫の介添え達がどやどやと入ってしまった。それを見守る蔵入の様子は大層くやしげだ。
主上もそこにおいでになって、変な光景だなとご覧になっておられた。

卯の日清涼殿で行われる童御覧の儀の夜はもっと素晴らしく面白い。照明の灯台の灯火に映し出されるみんなの顔が痛々しい。