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私の読む「枕草子」 61段ー80段

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 逢坂の里 近江国逢坂の里附近
 ながめの里 所在未詳。「ながめ」(物思い)の語の興味。
 いざめの里 古今六帖、一に「東路のいざめの里」とあり、一説に伊勢・美濃。「いざめ」は寝覚めの意。
「あつまちの いさめのさとは はつあきの なかきよをひとり あかすわかなそ」(131)

 人づまの里 所在未詳。人妻の名の興味。
たのめの里 信濃国伊那郡"「たのめ」は頼ませの意。
 夕日の里 春曙抄に丹後。
 つまとりの里 自分がとって妻としたのだろうか。
 伏見の里 大和・山城いずれにもある。
 あさがほの里 所在未詳。「朝顔」は寝起きの顔の意。

草は
 菰 
 かざし(挿頭) 草木の花や枝を髪や冠に飾るもの。
「神代よりして云々」は、年中行事秘抄・袖中抄・公事根源などに見える故事によれば、賀茂別雷社が我は天つ神の子なりとて天に昇ったのを、家人が慕い悲しんだところ、夢中の託宣に、天の羽衣を作り、火を焼き矛を捧げ、奥山の賢木を立て、種々の彩色を垂でよ、又葵楓(あおいかつら)の蔓を厳に飾って待たば天降りまさんとあった。教えのままに祭をしたのが、即ち加茂祭りのの始めだという。
 おもだか 沢潟。面高の意に解して興じたもの。心のたかぶること。高慢。
 三稜草(みくり) 倭名抄、十に蛇床予(ひるむしろ)・三稜草と並んで見える。
 こだに 鳶の一種。木や岩につき、秋紅葉する。
 かたばみ 倭名抄、十「酢漿」を訓む。紋様に用いる。
(岩波書店 日本古典文学大系枕草子 補注。ネット。参照コピー)

 しのぶ草 非常に哀れである。
 道芝 何となく可笑しい。
 茅鼻(つばな) これも可笑しい。
 蓬(よもぎ) 大層可笑しい。
 山菅(やますげ)・日かげ・山藍(あゐ)・浜木綿(はまゆふ)・葛(くず)・笹(ささ)・青つづら・苗・浅茅(あさぢ)大変に面白い・

 蓮(はちす)葉、どの草よりも優れて目出度い。衆生済度の妙法蓮華の例えにも、蓮華の花は仏に奉り、実は数珠として糸を通して繋がれ、衆生は念仏して往生極楽の縁につながるとすればよい。また、花がない頃の季節に緑に染まった池に紅の花を咲かせるのも風情がある。翠翁紅(すいおうこう)歳に詠われている(出典未詳)。

 唐葵(からあおい)(花葵・立葵の古名)
は日の影に従って傾くのこそ、草木と言えない心があるようだ。
 さしも草(蓬の異名)・八重むぐら・つき草、色があせ易いのは困ったものだ。
 
【六七】
草の花は、
 なでしこ、唐なでしこ(石竹)はいうまでもなく、大和なでしこ(河原なでしこ)も大層立派だ。
 をみなへし・桔梗(ききょう)・あさがほ・かるかや・菊・壺すみれ。
 龍膽(りんどう)は枝の具合などもむさくるしいが、他の花がみんな枯れた中で大変に華やかな色で咲いているのがとても気に入った。
 
 また、わざわざ取り立てて人間扱いはできそうにない格好だがつゆ草、葉鶏頭はいじらしい。名前もまあいいだろう。雁の来る花なんて文字では書く。
 かにひの花 色は濃いくは無いが、藤の花とよく似ていて、春と秋に咲くのが不思議だ。

 萩、大変色に深みがあり枝がしなるほど咲いて朝露に濡れて穏やかに広がっている。後撰集、六秋中、貫之
「さ牡鹿の立ち馴らす小野の秋萩に置ける白露われも消ぬべし」(306)
 とある、さ牡鹿がとりわけて立ち馴らすというのも格別の感じだ。
八重山吹き。

 夕顔は、花の形も朝顔に似て、朝顔夕顔と続けてよぶと、いかにも面白そうな花の姿に対して、夕顔の実は大きく円形またはやや長いのが悔しい。何でまたそう不恰好に生まれついたのだろう。せめてほうずきなどの大きさであれよかし。しかし、やはり夕顔という名前は可笑しい。
 しもつけの花・葦の花。

 以上「草の花は」の段に薄を入れないのは甚だけしからんと人がいうようだ。

秋の野原の全体的なおもしろさは、といって、何と言っても薄があればである。穂の先が蘇枋色で大層濃いのが朝露に濡れて一面に広がる、それほどの風情が他にあろうか。

 秋の終り方、その時はまあ実に見がいのないことだ。色さまざまに乱れ咲いていた花が、あとかたもなく散ってしまったあとに冬が来るまで、頭が白くなって乱れ広がったのも気づかず、昔を思い出すようにして風になびいて揺れ動く人間達に本当に似ている。誰かによそえる気持があるので、それを特にあわれと思うわけなのだろう。

【六八】

 歌集は、万葉集に古今和歌集。

【六九】

 歌の題は、都・葛(くず)・三稜花(みくら)・駒・霰。

【七〇】

 気がかりなもの。不安な感じのもの。

 比叡山延暦寺に、出家受戒の後ここに龍って十二年間修行する法師は下山が許されなかったのでその母親は、知らないところに上っていったところ、まるで見てはいけないかのように灯火も点さないで、それでもきちんと並んで坐っていた。

 新参の召使の気ごころも知れないのに、貴重な品物を持たせて、その人の許に送り出したのに、遅くに帰ってきた。物もまだ言えない稚児がふんぞり返って、誰も抱いてやらないので大泣きしていた。


 日かげ 倭名抄、五「蘿鬘 比加介加都良」。「日かげ」は略称。さがりごけとも。大甞会に冠に垂らす。

 山藍 葉を染料とし、大甞会等の斎衣を染める。

 青つづら 山野に自生する蔓草。蔓で籠などを編む。

 翠翁紅(すいおうこう) 出典未詳。
 さしも草 よもぎの異名。葉でもぐさを製し灸に使う。
 八重むぐら 茜科の草本の名。また雑草の繁茂したさま。
 つき草 つゆ草の古名。花を青色の染料とする

 あさがほ 万葉集では桔梗。異説も多い。平安時代に入り槿(むくげ)の異名、やがて牽牛子(けにごし)の称なって今日に至る。ここも第三の意。

【七一】

 違いすぎて較べようのないもの。

 夏と冬と。夜と昼と。雨降る日と照る日と。人の笑うと腹立てると。老いた人と若い人と。白と黒と。愛する人と憎い人。同じ男でも、こちらに好意がある折となくなった折とでは、真実別人に思われることだ。

 火と水と。肥えた人、痩せた人。髪の長い女と短い女と。

【七二】

夜烏とは「ごいさぎ」、が居て、夜中寝ながらさわぐのは興味がある。巣から落ちて木伝いに寝ぼけた鳴き声に、昼見た感じとはちがっておもしろい。

【七三】

 人目を忍んで人と逢っている所では、夏が面白い。大変短い夜が明けてしまったのに、一睡もしなかった。昨夜からそのままどこも皆開け放しなので、素通しに見られてしまっている。それでもまだ言い残したことがあるのでお互い立ち去ることが出来なくて、互いにまだ話を続けていると、二人が座っているすぐ上から、烏が鳴きながら高く飛び去るのが、二人のことがすっかりと見られてしまったようで、恥ずかしい。

 また、冬の夜大変寒いので、恋人と夜具に埋もれるように寝て、鐘の音を聞くと、穴の底で聞くように思えて可笑しい。鳥の鳴き声もはじめは羽ばたきとともに聞こえるのだが
声をふくめて鳴き出すと大層ふかぶかとして遠い声が、夜が明けるとともに近くで聞こえてくるのが可笑しい。

【七四】