漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
1―5 【似】
【似】は、(とうばる)とも読む。その意味は、貴人の容貌に似ていることとか。
そして、世間でよくあるのが、『似たもの同士』。
これは貴人の(とうばる)ではなく、単に振る舞いや性格、そして考え方が似ているだけの話しだ。だが、なかなかいい言葉だ。
こんな似たもの同士、なにも人間だけではない。宇宙の星にもある。
そして、地球にもその相棒が存在するとか。
約20光年離れた天秤座に、太陽に似たグリーズ581という恒星がある。その六つある惑星の一つに、『C』なる星がある。
その星こそが第二の地球、『似たもの同士』だと言われている。
ただ、その第二の地球、自転していない。そのために、太陽(グリーズ581)に面している部分は摂氏70〜80度ある。また、裏面は氷点下だそうだ。
だが、心配は御無用。
その裏表(うらおもて)の境目にある20度の温暖の帯、それがぐるっと星を巻いている。そこに人間、つまり我々の友人たち、そう、我々の似たもの同士が住んでいる可能性が高い。
ひょっとしたら、第二の自分というヤツがいて、今日もアホな小説を書いているかも知れない。
そんな『C』星の景色、それは多分、星の表と裏の境目だから、太陽は天高く昇らず、一日中美しい夕焼け状態だと言う。
そんな第二の地球の『似たもの同士』に逢いに行ってみたいものだ。
ただ――【似】て非なり――でないことを祈りつつになる、かな。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊