漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
11―2 【楽】
【楽】、元の字は【樂】
木に「繭」(まゆ)のかかる様を表した「櫟」(くぬぎ)の木、その象形だとか。
また、木に鈴を一杯付けた祭礼用の楽器の象形だとか。
いずれにしても浮かれ出したくなる字体だ。
「楽は苦の種、苦は楽の種」
世間ではこんなことが言われてるが、「楽は生の種」なのかも知れない。
そんな【楽】、人によってその味わい方はそれぞれだ。
歌を唄って楽しい。ものを書いて、気分が高揚する。絵を描いて、時を忘れる。
みんなの楽しみ方は様々だ。しかし、そこには共通点がある。
【楽】の真っ最中、脳内ではドーパミンという物質が溢れ出ている、
ドーパミン、それを化学記号で表せば、ごく単純な「C8H11NO2」。
とにかく炭素、水素、窒素、酸素の組み合わせだけで、もう幸せ気分。
ならば、もっと楽しい気分になるためには、もっと「C8H11NO2」を増やせば良い。ネットで調べてみれば、増やし方の一番目の答が――「神を信じること」だった。
これって、どやさ? ……と叫んでしまったが、不謹慎かな。
それでは信心深くない一般市民、脳内ドーパミン「C8H11NO2」を増やすために何をすれば良いのだろうか?
さらに調べてみると、答があった。
レバーを食べろ、と。
いやはやレバーね、となるが……。
されどだ、神を信じることより、こちらの方がなんとなく信憑性(しんぴょうせい)があるような気がしてくるから不思議だ。
ひょっとすると、ニラレバ炒めは【楽】の種なのかも知れないぞ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊