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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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9―3 【薔】

 【薔】、難しい字だ。
 音読みで、(ショク)、(ショウ)、(ソウ)、(バ)。そして、「薇」と合体して「薔薇」(ばら)となる。

 低木で棘のある木が「茨荊棘」(いばら)。「い」が抜けて「ばら」、それに漢語の「薔薇」を宛てたとか。
 それを音読みで(そうび)、(しょうび)と読む。

 その「薔薇」の字、日本での初登場は約1、100年前の西暦918年。本草和名という本で、「うまら」と読まれている。
 そんな「薔薇」、1867年以前の薔薇は「オールドローズ」と呼ばれ、それ以降の四季咲きは「モダンローズ」と大別される。
 そして最近人気があるのが、この二つのDNAを持つ「イングリッシュローズ」だとか。特徴は、なんとなく芍薬(しゃくやく)のような、いや牡丹のような……、やっぱり薔薇かな?

 そんな薔薇、かってクレオパトラは、百均の温泉名湯の粉ではなく、一杯の薔薇の花びらを浮かせた風呂に、毎晩とっぷりと浸かっていたとか。
 美人は薔薇によって育まれるものなのだろうか。
 そんな期待に応え、あるはあるは薔薇冠商品。
 薔薇香水はもちろん、薔薇水、薔薇茶、薔薇酒、果ては薔薇団子に薔薇饅頭までもが。

 ということで、【薔】の世界、古今東西、実に賑わってるようだ。

 追記:
  だが、残念なことだ。
  ほとんどの人が【薔薇】という字が書けない。

  【薔】――草に土、人人が回る。
  【薇】――草の下が微か、ただその中の山下に一あり。

  さあ、これで今日から威張れるぞ、【薔薇】という字書けるぞと。