漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
1―3 【機】
【機】は(はた)と読み、織物を織る道具を意味する。
【機】は元来物理的に動くものであり、からくりもの、つまりマシンのことだ。
だが、そこから自由奔放に他の漢字を取り込み、いろいろなものを機織りしてしまうようになった。
しかも時までも織ってしまったのだ。
例えば、「会う」を織って「機会」となり、「好む」を織って「好機」ともなる。
そして、止せば良いのに「運」まで織って「機運」ともなる。
だが英語では、この時間的な【機】、論理的に偶然の機を「chance」と言い、偶然でない機を「opportunity」と区別して使う。それが一般的だ。
やはり日本人は情緒的なのだろうか、どちらの【機】も好き。
偶然も、偶然でないものも、全く無視。
だが、こんな【機】だけは勘弁願いたい。それは『危機』
せめて一言後ろに添えて欲しい、『危機一髪』と。
そんな【機】に目が離せないのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊