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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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8―6 【嵌】

 【嵌】は、「山」/「甘」/「欠」の組み合わせ。
 「甘」は鍵を掛けた字、「欠」は口を開いて立つ人を横から見た形。
 これらに「山」が加わり、山中の入り込んだ窪(くぼ)みとなり、その中に物を入れる意味となるらしい。
 これって一体どういうことと叫びたくなる。

 そんなややこしい漢字だが、音で(カン)と読み、訓で(はまる)と読む。
 そんな「ハマル」、最近大流行だ。
 やれスマホに、やれゲームに……ハマッタ! ハマッタ!
 世間の皆さま、あちらでハマッタ、こちらでハマッタ、あちゃこちゃでハマリッ放し。
 そして、また、その予備軍たちは口を揃えて仰られま〜す。
 私……ハマリそう!

 こういう事態を麻雀で言えば、カンチャン待ちされていて、そこへわざわざホウチャン(放銃)するようなもの。
 要は、敵は四萬と六萬の間の五萬で待っていて、そこへわざわざ値打ちの赤五萬を放り込んで――、ロン(栄)!

 そんな「カンチャン待ち」、それを漢字で書けば、四と六の間の「間ちゃん待ち」ではない。
 正しくは、まさにハマリ込むの、【嵌】張待ちなのだ。
 またこういう事態を、言い換えれば、どつぼに【嵌】まった、と言うらしい。

 とにかくハマッタ! ハマッタ! だが、まだまだ、あれやこれやに【嵌】まりそう!
 あ〜あ。