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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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4―3 【驫】

 【驫】、この字を大きくすれば、

      馬
     馬馬

 これは「馬」を三つ使い、二段に積み上げた漢字。

 このような類の漢字は他にも多くある。
 その代表例が、「木」の積み上げ。まずは「木」を横に並べて「林」になり、そして「森」となる。
 同様に、「馬」を二つ並べて「馬馬」となる。これは(トク)と音読みし、馬が走る意味だとか。
 そして、「馬」を積み上げて【驫】となる。

 音読みで(ヒュウ)、訓読みで(とどろ)だそうだ。
 意味は、多くの馬が群を成し、その走る様。あるいは、その際に発せられてくる音だとされている。

 競馬場へ行けば、名馬たちが第四コーナーを回り、群を成して、目の前を駆け抜けて行く。
 その音が……【驫】
 それは「ドドドー」と聞こえるのだが、中国のピンインで行けば、(biao)あるいは(duo)。
 中国では、どうも「ビヤオー」とか、「ドゥオー」とかに聞こえているようだ。

 そして「馬」とくれば、当然、その因縁の相棒は――「鹿」。
 「鹿」にも積み上げ漢字があって、それを大きく書けば、

      鹿
     鹿鹿

 (ソ)と読み、粗いという意味らしい。
 ここまで来れば、後は
      馬
     馬馬  と

      鹿
     鹿鹿  との恐怖の合体。

 読みでいくと、(ヒュウソ)だろうか?

 しかし、これって一体どんな馬鹿なんだろうか?
 馬鹿は死ななきゃ治らない。

   馬  鹿
  馬馬 鹿鹿 は、三回死ななきゃ治らない。それくらい強烈なのかな?

 で、気付いてしまった。
 こんな造語を作って、一人悦に入ってるオヤジこそが……
 三倍馬鹿の『ヒュウソ』そのものなんだと。