漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
28―3 【掏】
【掏】は(トウ)と音読みし、右部は窯で土器を焼く形だとか。
熟語に『掏摸』がある。
こんな字、なかなか読めない。だが、(すり)と読む。
いわゆる人様から財布や物品を失敬する「スリ」のことだ。
スリは窃盗罪であるが、時代は明治から昭和、スリたちが多く暗躍していた。
関東一円の大親分が仕立屋の銀次、本名は富田銀次郎と言ったらしい。
それに比べ、スリの新人は財布を抜き取ると恐くなり、すぐに走り出すそうな。そこから新人を「駆け出し」と呼ぶようになったとか。
そんなスリたち、いろんなヤツがいた。
ケツパーの三ちゃん、ケツパーとはケツは尻、パーは財布のこと。
尻のポケットの上から財布を触り、どれくらいの金額が入っているかを当て、抜き取った。
そのケツパーの梅ジイ、ベテランであったが、最後はアメ横商店街で逮捕された。
デパ地下を専門にしていたのが、デパ地下のさと婆。
それに声掛けタマちゃん。優しく話し掛け、そのスキに財布を抜き取ったとか。
多くのスリたちがいたが、最近話題に上がったのが駒崎姉妹。スリデビューがこま*り姉妹と同じ頃だったとか。
そして2012年10月29日、姉は駒崎恵美子80歳、妹は妙子72歳、、梅田の阪@デパートで財布を盗んだと逮捕された。
スリ歴50年のベテランではあったが、高齢のため指の動きが鈍くなっていたとか。
とにかく【掏】(トウ)という漢字、『掏摸』(スリ)といけない熟語になるが、どことなく笑えてくるから不思議だ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊